江戸時代は清潔だったの?
ぼくが江戸時代の記録を読んでいて、いつも気になってしまうのが町の清潔さ。
女性が自殺するときはすぐ井戸に飛び込んだり、火事になると、商人が顧客名簿を井戸に投げ入れて避難させたりしていますが、それ飲むやつよ!?
井戸のことこういう考え方してない!?
それ水道だよ!
こんなことで人々はお腹壊したり、病気になったりしていなかったのでしょうか?
しかし江戸時代は不潔どころか、当時世界でもっとも清潔な町だったのです。
水道もない時代なのになぜ?そこにはあるビジネスが関係していました。
農家が、汚物買い取りサービスを行っていた!
当時のパリやロンドンでは、人々が家のトイレで用を足した後、溜まったものを川に捨てていました。川に捨てるのがめんどくさいというずぼらな人は、そのへんに適当に捨てていました。
今と違って、清掃局の人間もいないため、馬車を使えば馬の糞も放置。
はっきり言って、当時の記録によると、街中はすべて糞だらけだったと記録されています。
更にロンドンでは文明が進み、水道を作ることになったのですが、なんと飲水用の取り込み口が、下水道の排水口よりも下にあったため、下水道の汚物が飲水に流れ込み、とんでもなく不衛生な状態になりました。
『香水』が生まれたきっかけは、お風呂文化のなかったフランス人が『においを消すため』だったのは有名な話ですが、海外はとてつもなく不衛生だったのです。
ちなみにフランス人がお風呂を使わなかったのは、美しさに対するこだわりのため。
フランスの水はマグネシウムとカルシウムが多い『硬水』なので、これで顔や髪を洗うと、肌はボロボロ、髪はパサパサ、疲れ果てた芸人のような姿になります。
そのためにフランスではお風呂文化が発達しなかったんですね。
話がそれましたが、当時の海外では垂れ流しだった人々の汚物や動物の糞を、畑で肥料として使うと、めちゃくちゃいい感じに作物が育つことを農家の方々は経験で知っていました。
ですから、畑から都会に来ては、「汚物くれたら野菜あげますけど、みなさんのトイレにたまってないですか~?」と買い取りビジネスを初めていたわけです。
この買取ビジネスが世界でもっとも江戸時代を清潔にした理由です。
また、当然ながら馬の糞も、畑で肥料として使えます。
農家の人が都会に出てきて、道端に馬の糞が落ちていたら、それはもうログインボーナスです。
このような買い取りビジネスが発展していたため、人々は外でトイレがしたくなっても我慢し、「家に帰って溜めておかないともったいない!これは『資産』なんだから!!」と思っていたそうです。
海外では忌み嫌われ、不法投棄が多発し、町は汚れて不衛生、病気が乱発する時代に、江戸時代はまさにお手本ともいうべき『みんなの役に立つビジネス』が行われていました。
完全に偶然に始まっただけだと思いますが、この汚物買取ビジネスは、現代にエコロジーや地球環境に配慮したビジネスが行われている中、それらの基本であり完成形でもあると言えるでしょう。
捨てるはずだったものが『資産』であり、得をすると認識させて、売買を成立させる。
その結果誰もがハッピーになるという、まさに世界のお手本となるビジネスです。
井戸は清潔だったのか?
冒頭の話に戻りますと、江戸時代の井戸は商人も財産の避難所として使われていたのに、清潔だったのかどうかですが、これもなんと世界で一番清潔な設備でした。
江戸以外に水道があったのはフランスですが、これは先程挙げたように、異常に不衛生だっただけではなく、週3回・7時間だけ水が流れる仕組みでした。今のように24時間式ではなかったのです。
しかし江戸時代の井戸は、地面の底に木でパイプを作り、きれいな川や池から24時間水を流しっぱなしにしていました。
ですから、多少井戸に誰かが何かを投げ込んだところで、不純物はすぐに流されて清潔になっていくのです。そもそも井戸は大切に使われており、そのようなことは滅多にありませんでした。
不衛生な汚物は買い取りビジネスために町からなくなり、せいぜい洗濯くらいのことですが、江戸時代は「石鹸は高すぎる!」ということで使われておらず、エコロジーな木の実(ムクロジ)などで服を掃除していました。
このムクロジは海外でソープナッツとも言われ、つぶして粉にするとめちゃくちゃ泡立つ上に環境に優しく、海外のオーガニック専門店ではよく扱われています。
このような高級品を、『庶民の知恵』で使っていた江戸時代。
フランスやパリの人は、当時の江戸を訪れた際、「なんでこんなに町がきれいなの!?みんな毎日お風呂入ってるし、服はボロボロだけど毎日洗濯してめっちゃ清潔!!なにこれ!!」と驚いています。
当時の記録では、「川を屋形船でのんびり遊覧しているとき、ちょっとお茶欲しくなったら、川の水すくってお湯わかして使ったりしてました」という記述まであります。
これは、信じられないほど川の水が美しかったことを現しています。
江戸時代の人々の知恵と工夫とビジネスで、町は常に世界最高水準の美しさを保っていたのです。
高度成長期に入ると…
そんな美しき町・江戸でしたが、日本が高度成長期に入ると、工場は作られ、洗剤は多用され、川の水は汚染され、魚は化学薬品で病気になり、それを食べた住人には深刻な公害病が蔓延しました。
かつて、美しき町を築いていた江戸時代の人たちが見たら、別の国の話かと思ってしまうでしょう。
江戸時代は医学も発達しておらず、病気での死亡率も高かったため、文明が進むことは悪いことではありません。
しかし、せっかく持っていたものを手放して、目先の便利さに溺れてしまうことは、世界的に見てもとてももったいないことだと言えるでしょう。
現代はどうなのでしょうか。
現代がどうであるかは、未来の人々が現代を振り返った時、愚かであったか賢かったかを決めるでしょう。
ぼくたちの日々の生活は、実は、未来への遺産なのです。