新海誠監督の最高傑作、『君の名は』。
これまでの新海誠作品の枠を超え、すべての邦画を含めた中でも屈指の動員数となり、数多くの方々から絶賛されています。
しかし当然ながら、「あそこはちょっとおかしいんじゃないの」「この展開はここが…」というクレームや不満も数多く寄せられているのは事実。
ファンにとっては、マイナーだと思って楽しんでいた新海誠が、急に宮﨑駿に次ぐレベルまで売れてこっちが驚いているというのが本音であり、作品のどこそこがおかしいと言われても、まず心が追いついていかず、「そうね…」と中途半端なコメンテーターのような状態になっています。
けれどもついに日本の邦画の歴史に残る作品になりつつある今、新海誠の大ファンで全作品をくまなく見ている管理人が、『君の名は』に関するクレームや不満を、大阪人の精神ですべてまぁ~るく解決したいと思います! ネタバレもあるので注意です!
展開やストーリーの辻褄があわない?なんかがおかしい
この感想は、もともと新海誠作品によくいただく不満でもあります。
新海誠監督の代表作は『秒速5センチメートル』なのですが、この作品は、
「別れた彼女のこと忘れられないな… いつもどこかに探してしまうな… 君はもう探してないみたいだけど…」
という切ない思いを持った主人公が登場し、
「これからどうなっていくのかな?」
と見守っていたら、別にどうもしないまま終わるという映像作品。
ですので昔から、「ストーリーがないじゃないか」「ちゃんと結末をつけないとだめじゃないか」という不満はあちこちから聞かれます。
それに関してもまぁるく話を収めたいと思うので、聞いていただけますか?
これまでの新海誠作品はとてもマイナー系で、ほとんどムード・ミュージック・ビデオ(ストーリーつき)だったのです。
もともと新海誠は、「自分が風景に癒やされた経験をみんなに伝えたい」という人だったので、やはり風景が優先、ヴィジュアル優先の監督。
ファンもそのように、美しい映像とそれにベストマッチした音楽を聴いて楽しんでいたというのが実情でした。
『秒速5センチメートル』では、
「あ~、彼女と別れて、彼女だけ先に行って寂しいね… あるある」
と思いながら感傷に浸って楽しみ、デビュー作『ほしのこえ』では、
「あ~、彼女が宇宙船に乗って8光年も離れ離れになって、相対性理論によってぼくが24歳になっても彼女は15歳のままで、ぼくだけ年を取って寂しいね… あるある… ってねーーーよ!!」
とセルフツッコミするためにこれらの作品は存在していたのです。
ですので、「なんかストーリーに整合性が…」という部分もあるにはあったものの、これはミュージック・ビデオにおいて
このひとはなぜ海の上で『いないないない、ばあ』をしているの? 整合性がない
というのに近い部分があり、それはそれとして作品を楽しんでおこうというのがファンだったわけです。
■整合性がなくても素晴らしいものもある。しかしこの例えはちょっとおかしかった。
また、新海誠作品は映像優先ですが、だいたい小説版も発売されていたりして、そちらで映像に入らなかった細かい部分は補完できるようにもなっています。
ですからぼくなんかはだいたい、ストーリー的にひっかかるところも小説で補完していますし、『ほしのこえ』に至ってはストーリーどころか絵柄まで脳内補完しています。
(C)新海誠、コミックス・ウェーブ
■ぼくが絵柄を脳内補完した『ほしのこえ』。見ての通り線がきれいではない、デッサンが狂っているなどあるが、すべて脳内できれいに補完した。
ちなみに新海誠監督はこの作品をほとんどひとりで作り、Macでフォトショップなど駆使してがんばったという。すごい!
むしろこれまでの新海誠作品に比べると、『君の名は。』はたっぷりストーリーが詰め込まれたジェットコースター的作品だと思っていますし、今までの新海誠作品を超えていて、個人的には非常に満足しています。
それでもやはり「細部にあらが…」という方々の声は多いですし、国民的作品となった今、「ちゃんと細かい疑問も解消して!」という声が聞かれるのは当然のこと。そういった方々には、『小説版・君の名は。』もおすすめしたいです。
新海誠監督が言うには、『君の名は。』は2時間たっぷり楽しみきってもらうために、あえて説明くさいシーンを省いて、楽しむことのみの映画にしたということです。
だからこそ納得行かないところもあるかも知れませんが、小説版を読むといろいろと深く納得できると思いますよ。
まぁるく収まった!!
■左が本編、右がサイドストーリーの小説版です。本編は瀧と三葉視点のみ。サイドストーリーはサブキャラも掘り下げています。
彗星の軌道が違う? ちゃんと調べなさい問題
これは、『君の名は。』の中で重要な役割を占めている彗星の軌道が、実際のものとかなり違うという指摘です。
公開後すぐに指摘され、「こんなことちゃんと調べて描いてください」という不満がネット上で湧き上がりました。
まぁるく収めて、良いですか?
まずひとつ言わせていただきたいのですが、こちらの作中のシーンを御覧ください。
瀧くんがティアマト彗星を眺めているシーンです。
(C)2016「君の名は。」製作委員会
オフィシャルページ予告ムービーより
めちゃくちゃ美しいですよね。
こんなにレーザービームみたいに美しく頭上スレスレまで来る彗星ってありますか?
確かにこれは軌道がおかしいとかさんざん言われても仕方のない状況です。
よく調べずにきれいな彗星を描こうとして知識不足だったのではないかという、納得いかない気持ちはよくわかります。
しかし逆に考えてください、
瀧と三葉は、作中で偶然にも美男美女コンビですが、このふたりが
参照:オフィシャルブログより
メイプル超合金だったとして、本当にこの映画はこんなに売れましたか?
「え~、別に見なくてもいい」と言って見に行かなかったのではないですか?
どれだけ現実的に、「美男美女がちょうど入れ替わるなんてまずありえないよ! 最低でも片方はお笑い芸人みたいなのになるよ!」と言われても、そうならないと映画見に来てくれないんだからしょうがないです!
ですから彗星も、「こんな軌道ありえない、本当はもっと遠い!」というのはもっともですし、ぼくもこんなきれいなレーザービームみたいな彗星ないだろと思っています。
しかしそもそもこの彗星、この世に存在しない架空の彗星ですし、そもそもストーリーとしてこれが墜落したところでクレーターはできませんからね。
Impact Earth!という彗星の衝突シミュレーターが海外にあり、そこに『君の名は。』のティアマト彗星のデータを入れても、この規模の彗星が落下したとて大気圏の摩擦でほとんど燃え尽き、大した被害はないということが確認できます。
実際に欠片の墜落だけでクレーターを起こすほどになると、アルマゲドンかなと錯覚するような彗星になるわけで、もともとリアリティは犠牲にされた架空の彗星です。
そもそも新海誠監督は、絵の正しさよりも表現の美しさを優先しているので、科学や絵としてはあちこちに間違いがあることは否めません。
こちらのメインビジュアルカットに関しても、絵に詳しければ『三葉の光の当たり方がおかしい』、『太陽がふたつないとこうはならない』ということが直感的にわかるはず。
しかしこれは、おかしいことを承知の上で、『光と影のなかにいるふたり』を表現するために意図的に入れたとインタビューで答えられていました。
正しくはないが絵としておもしろいということですね。
確かにいろいろとおかしいところはたくさんあり、現実的にあり得ない部分もあります。
普通はメイプル超合金だろうという主人公たちも、極限まで映画向けに美男美女に揃えたわけで、やはり『ビジュアル映画』ということを優先した演出でもあるわけです。
彗星も、天文学的に正しくないのですが、きれいに見せるための演出だということですね。
そんな演出が必要なのかどうか、
並べれば「やっぱり必要かな」と納得できるはずです!
■絵として正しいのは右。しかしみんなが見に行くのは左だった。まぁるく収まっ…た…?
なぜ三葉は3年の時間差に気づかないのか?
作中で泣けるシーンのひとつである、三葉が瀧に会いに行くも、それが『3年前』であることに気づかず、「誰?」と冷たい対応をされるというシーン。
ここは泣きました… 切なくて…
もうしっかり泣けたからそれはそれでいいじゃんね、という思いもありますが、やはりここはみんな気になっていて省けない疑問。「3年前というと瀧が14歳のころであり、17歳が14歳になったらさすがに気づくだろう?」というものです。
また、そもそも、3年の時間差を持って男女が入れ替わったら、すぐに時代が違うことに気づいて当然という意見もあります。
たとえばテレビをつけた時、3年も時間が経つと登場するタレントも完全に入れ替わっており、『メイプル超合金? 誰それ?』という違和感に気づかないのはおかしいということです。3年も経てば、スマホも古いどころの話ではなくなってきますしね。
これに関して言うと、入れ替わり時は記憶が曖昧になるという設定から、なんかフワフワしていて気づかない、忘れたということで説明がつくと思います。
しかし、三葉が瀧に会いに行ったのは、このフワフワ入れ替わり時ではなく、しらふの時。
この時、14歳の瀧を見れば、「あれ?若すぎない?」と思うんじゃないかという疑問と矛盾、これには説得力があります。
どれほど新海誠ファンであっても、ここだけは丸く収めることができなさそうですが、これもまた丸く収めさせていただきたいと思います。
さて、
みなさん、えなりかずきというタレントをご存知ですか?
『渡る世間は鬼ばかり』に子役として登場したり、
『おいらに惚れちゃ怪我するぜ』という「ご心配いただかなくても大丈夫です」と言いたくなるCDを発売しているえなりかずきさんです。
Googleで画像検索すると、たくさん彼の画像が出てきますね。
ここでひとつお尋ねしたいのですが、それぞれの画像で数年、もしくは数十年の時間が経過していると思うんですけど、それを正確に並べ替えることはできるでしょうか?
左から2番目の異性を意識したヘアスタイルの時は20代前半かなと考えられますし、4番目は子役時代です。
しかし、2、3年ごとのえなりかずきを正確に並べろと言われると、ほとんど不可能。電車でちらっと会ったくらいでは、3年前のえなりかずきがタイムスリップして来ていても全然わからないのではないでしょうか?
もうおわかりですね。
瀧くんはえなりかずきだったのです。
まさか新海誠ファンとして疑問を丸く収めようとした結果、このような結末に至るとは想像もしていませんでしたが、瀧くんはそういう感じの、成長しない系の男子だったのです。
やや童顔、ベビーフェイスと言いましょうか、そういう可愛い系男子だったわけですね。
とんでもない展開になってきてしまいました。だいぶ無理があります。
しかしこう捉えることによってすべては解決するのです。
瀧くんがえなりかずきのように可愛い顔だったため、三葉もわからなかったというわけですね。
丸く収まっ…た…わけない!!(笑)
オタクが女性を性のマスコットとしていないか?問題
最後の疑問です。
作中で、瀧くんは三葉と体が入れ替わるたびに、胸を揉んでしまうというシーンが登場します。
また、三葉の妹(小学生)が、三葉に対して「お姉ちゃんが口をつけたお酒を、プロマイドつきで販売したらいいじゃん」と提案しています。
これに関して、
「なぜ小学生がそこまで性の価値を知っているのか?」
「小学生女子なのに発想がおっさん」
「オタクが女性を性のマスコットとしているのではないか?」
「これはオタク映画じゃないか!」
というクレームが寄せられているのです。
このご意見に対し、まぁるく収めさせていただきます。
その前に、新海誠監督が好きだと言っているアニメを紹介したいと思います。
※新海誠監督の好きなアニメ
新海誠監督はオタクだと思います。
以上です。
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