天才、25周年。
漫画界に突如現れた天才、漫☆画太郎先生。
画太郎先生の活躍もついに2015年で25周年となり、「これはあちこちで特集されるぞ!!」と思っていたら、まったくどこでも特集されないどころか、世間はそんなこと知りもしない様子。
どうなってるの!! 25周年だよ!!
そんなわけで今回は、画太郎先生の漫画家25周年記念に、改めて画太郎先生のすごさととてつもなさを振り返ってみたいと思います。
衝撃のデビュー
25年前の1990年、漫画太郎先生は『珍遊記』で衝撃のデビュー。『西遊記』をもじったパロディ作品です。
ちなみに当時、冨樫義博先生が『幽遊記』なる作品を連載しようとしていたものの、『珍遊記』と名前がかぶるからという理由で、『幽☆遊☆白書』に変えています。
あの幽☆遊☆白書に名前まで変えさせた漫画!!
まさかそんな漫画が1年で連載を終えるとは…。
しかし、当時の子どもたちに与えた影響はものすごく、内容もドラゴンボールを丸パクリするなど、神をも恐れぬ自由ぶりで人気を博しました。
かくいうぼくも、「こ、こんな漫画がこの世にあるなんて!!」と熱狂したものです。
とてつもないほどおもしろい主人公たちの出会いと紹介が終わり、いよいよ天竺へ向けての長い冒険が始まる…と期待していたら、たまたま立ち寄った酒場でぐたぐだと無関係なことを繰り返した結果、話が終わらなくなり、なにひとつ冒険に出ていないのにアンケートの人気がなくなって漫画自体が終わったという意味不明な伝説を残しています。
天竺への長い旅どころか、ちょっと立ち寄った酒場のエピソードがラストエピソードとなったため、漫画の中では1日しか時間が経っていないまま終了しています。
やはり普通ではない超弩級の破壊力。これで終わってもすごい話ですが、更に画太郎先生はとてつもない世界を繰り広げていくのです。
可愛い女の子出てきた!!
衝撃の『珍遊記』から2年間の沈黙を経て、意欲作『まんゆうき』が連載されます。
名前も『漫・F・画太郎』に改名、あたかも藤子・F・不二雄のような名前になっています。
これまで女性キャラはモンスター的なものしか描かれていなかったにも関わらず、なんと今回の主人公は可愛い女の子。しかし画太郎先生らしく、まるで可愛いことを前面に出しません。ほとんどジジババと妖怪の話になっています。
ちなみに上の表紙は最近出た新装版のもので、連載当時のコミックの表紙はこちら。
本売る気ないんじゃないのと言いたくなるほどえげつない表紙です。
1巻の表紙は、すぐやられた妖怪(なぜこれが表紙に!?)。
2巻の表紙は、老婆が『漫画家を目指すぼっちゃんたち、おばあちゃんがいいこと教えてあげるよ』とささやいている表紙。
もちろんいいことまったく教えてくれません。むしろ本編とはまったく関係ない人物です。
『まんゆうき』は2巻で終わり、連載時の最終回は『ポックリ大魔王復活』。
ピッコロ大魔王そっくりの大魔王が復活し、1話で死ぬという話でしたが、もうなんのこっちゃ分かりません。画太郎先生も意味分かってないんじゃないかな?
珍遊記にしてもまんゆうきにしても、連載中は「話がぜんっっっぜん進まない!!いつ次の話になるんだよ!!」と思わされるのですが、単行本で読むとだらだらした部分含めてめちゃくちゃおもしろい。
うまく担当編集さんが描かせてくれればいい作品になると思っていたのですが、その後少年ジャンプでは連載されず、なぜか『オールマン』で単行本を出されました。
道徳戦士!
『まんゆうき』もこれも、Amazonにある画像が異常に小さい!もっと大切に扱ってください!
『珍遊記』6巻、『まんゆうき』2巻の歴史を経て辿り着いた、『道徳戦士超獣ギーガー』(全1巻)。
この漫画は主人公が道徳の戦士として、道徳を無視するけしからん連中をこらしめていくというストーリーです。
最初は、『電車でお年寄りに席を譲らない若者』を、お年寄りごと殺してしまうという可愛いものですんでいたのですが、いつもの画太郎先生の、一番最初に自分が飽きるという漫画家としてあってはならないくせが爆発し、次から次へと展開が適当になっていきます。
「たばこのポイ捨てがけしからん!」
→タバコの吸口をパスタに変えろ!!最後は食べられる!!
「ピンポンダッシュがけしからん!」
→ピンポンのボタンを指が届かないような位置にまでめりこませて設置しろ!
などなど、なんの解決にもなっていない解決方法が増えていき、最終的には編集長に原稿をシュレッダーされたので編集長を殺すなど、明らかにプライベートな恨みまで混ざってきている展開に。
なんでこんなことになったのと思わせる結末で終わりますが、その感想はこれからずっと続くことになるのです。
地獄甲子園
めちゃくちゃおもしろい野球漫画『地獄甲子園』。
ネットで流行っている『まさに外道!』という画像はこの漫画のものであることからも、根強い人気が見て取れることでしょう。
ストーリーは、甲子園を目指す高校に突如現れた天才野球少年が、チームメイトとともに優勝を狙う物語ですが、いつも通り、甲子園どころか第一回戦も終わらないまま漫画自体が終了しました。
理由は、なんやかんやと全然違うことばかりしていて話が進まず、人気がなくなって打ち切りといういつものパターンです。
野球と全く関係ないラーメンの話や、教頭と校長がちちくりあうだけの意味不明な展開が続き、ありえないことに何の脈絡もなくいきなり主人公が死亡。
死亡のわけすら説明されず、なんで死んだの??と思っていたら、仲間のピンチに理由もなく突然復活し、その瞬間に漫画が終わりました。
説明を書いていてもまったくわけが分かりませんが、実際に読んだ時の感想はそれ以上です。
『あらすじ』ページでは、
「こんなところまで読んでるやついるのかはっきりさせようぜ!あらすじを説明するのはそれからだ!!」
と毒づき、あらすじとは無関係に
「全然本が売れねーよ!てめーらが買わねーと金が入ってこねーんだよ!!」
「ひとり10冊買え!!買ったらすぐ燃やせ!!古本屋に売るな!!」
と、読者への攻撃が始まっていきます。
さらに、
「続きを買え!!買わなかったらお前は一生負け犬だとののしられるよ!!いいねーーーー!!」
など、常識をかなぐり捨てて読者を罵倒していくスタイルも発揮され、作者の焦りがむき出しになるという漫画界初の単行本にもなっています。
おもしろすぎるだろ画太郎先生…。この漫画はとにかく人気があり、映画にもなりました。
地獄甲子園というタイトルですが、もちろんほとんど野球していません。
※デジタル版総集編『地獄大甲子園』も発売されました。
迷走している
その後、短編集などの単行本を出すことが多くなり、少年チャンピオンにも移籍します。
画太郎先生の才能を高く評価している電気グルーヴとタッグを組み、『樹海少年ZOO1』の連載を始めますが、奇跡的なほどおもしろくなく、寄り道して話が脱線しては『なかったことにしてください!!』とお願いするなど、タッグを組んでもいつも通りじゃないかと思わされてしまいます。
しかし短編集はやはりどれもこれもおもしろい。
タイトルからもう面白いという作品も数多いです。
この『画太郎先生ありがとう、いつもおもしろい漫画を描いてくれて…』という短編集も傑作だと思います。
ここまでタイトルで自らを褒めきった短編集も他にありません。
収録されている初投稿作品『エスカレーション』なんかは、こんな作品を新人が持って来たら即連載すると思わせるような、天才的な大傑作です。
ちなみに画太郎先生は、「自分は連載に向いていない」というなんで漫画家なのと思わせる発言もしていますが、5回くらい書くともう飽き始めてくるという特徴から、長編はだれてくるものの、短編はひきしまっていて実に面白いです。
とんでもない短編も時々ありますが、短編集は基本的に傑作が多いといえるでしょう。
こんなことだと連載することが心配になってくるのですが、この後、ヤングジャンプで新たな連載が始まります。
つっぱり桃太郎!
『つっぱり桃太郎』は、『珍遊記』のようなとんでもない勢いもあり、『まんゆうき』のように可愛い女の子も出てくる、画太郎先生のいいとこ取りをしたような傑作です。
しかしAmazonの画像小さい~~~ぜんぜん見えないじゃん!!もっと大切に扱って!!
この漫画は今までにあったような、寄り道しておいて、その展開は『なかったことに!』と懇願するちゃぶ台返しスタイルや、違うことをしすぎて当初の目的なんてまるでどうでもよくなっているという本末転倒システムが封印され、鬼退治という目的にそって漫画が進められます。
すげーーーーーっ!!
ちゃんと話の内容どおりに展開が進んでる!!!
画太郎先生すごい!!話の内容通りに展開が進むなんて!!
っていうか一体どういうことなの!?
ふつう、話の内容どおりに展開が進んでいくだろ!!
しかしこれまで、当初の話とはまったく違う方向に進んでいくのが画太郎漫画の定番であったため、普通の展開になっただけで奇跡を見たような気持ちになります。
桃太郎を中心にした鬼退治が続き、順調に進んでいるかとおもいきや、まさかの打ち切り。
確かにコピーを多用したり、6ページ連続コピーで同じ絵という展開もありましたが、打ち切ることはねーだろ!!
画太郎先生がコピーで語るのは独自のスタイルだろ!!
しかしアンケートとは非情なもので、最終的に、老婆が大便をしているシーンで連載は完結しました。(単行本未収録)
あなた、なにやってるの?
同人誌かなにかで完結して欲しいとも思います。画太郎先生同人誌描いてもいいんじゃないの?
しかし、まったく商売っ気を出せない画太郎先生の不器用さも、またファンに愛される理由となっているのです。
ブスの瞳に恋してる
鈴木おさむが大島美幸と結婚し、その結婚生活を赤裸々にエッセイ化したのが『ブスの瞳に恋してる』。漫画を担当したのが画太郎先生。
漫画を担当したということですが、まったく担当しておらず、『ブスの瞳』とはまるっきり違う話が展開されます。
キャラクターすらまるで本人とは似ていません。完全な別人です。
コミカライズとか絶対させたらダメと思わせる破壊力がこの漫画にはありました。
なんでこんなことしてしまったんだ…誰がこんなことさせたの?
うちの子は画太郎漫画しか描けないって言ってるでしょ!!
うちの子をふつうの漫画家扱いしないで下さい!!
この後、『サラリーマン金太郎』にそっくりの『珍入社員金太郎』という漫画を連載し、金太郎そっくりの変質者がセクハラしまくるという展開を始めます。
同じ雑誌に載っている『サラリーマン金太郎』の明らかにパクリで、内容はセクハラと暴力。
こんなの大丈夫なのかと思っていたのですが、4話掲載した時点で何の告知もなく漫画が載らない状態に。
その後、「あれは終わりました」と編集部から発表され、単行本にもならず、自らクレームを呼ぶスタイルが最高点に達したこの時期は、先生にとってもファンにとっても暗黒時代だったと言えるでしょう。
いよいよ出た、短編の連載!
画太郎先生が得意とする短編。
そんな短編だけを作っていく連載がついに始まりました。
タイトルが明らかにパクリという感じですが、好きに楽しく短編を描いていくという、非常に画太郎先生に向いているんじゃないかと思わせるスタイルです。
これはおもしろい…! ビデオでアニメにもなりました。やはり画太郎先生には短編です。
画太郎先生独特のパワーが長編でだれることなく詰め込めるため、「これなら途中で先生が飽きることもないだろう」と安心して読めます。
しかしやはり画太郎先生、連載そのものが向いていないのか、どんどん途中から息切れし、同じような展開ばかりになり、どの話も最後はトラックに轢かれるコピーの結末で統一。
奇妙な物語パロディなのにオチが確定という、パロディ無意味なとんでもない展開になっていきます。
さすがにデビューから追いかけているファンでも、最終巻は苦痛でしかないというくらいコピーが多く、なぜこんなことになってしまったのか、後半の巻は出さなかったことにしてくれと考えてしまうレベルです。
しかし初期の頃は、いろいろなテイストが楽しめる傑作であり、画太郎先生が飽きなければもう一度やってほしいと思う作品です。
個人の欲望丸出し!!
2009年、世はリバイバルブーム。
かつて終了した名作を、もう一度連載するという試みがあちこちで行われていました。
そんな風潮にのっとり、画太郎先生がデビュー作『珍遊記』をリバイバルしたのが、『珍遊記2 ~夢の印税生活~』。
完全に個人の欲望丸出しのサブタイトルであり、ここまでくると好感が持てるレベルです。
単行本の表紙も、
焼き肉、
美女など、
もはや漫画とはまったく何の関係もない内容で、印税への本気度が見て取れます。
作品も今までのキャラクターが総登場して非常におもしろかったのですが、読者層に合わなかったのか、4巻で打ち切りとなりました。現在では入手困難となっており、プレミアがついています。プレミアつくなら打ち切らないでほしかった…!今も復活を望んでいる作品です。
いまどきの萌え展開に!
『珍遊記2』で印税生活をするどころか、前作の全6巻よりも少ない4巻で打ち切られてしまい、読者が本気で心配していたところに登場した新作が『ミトコン』。
可愛い女の子の冒険劇で、これまた一時期プレミアがつきました。
最近、打ち切られてはすぐプレミアついてるじゃん!!打ち切らないで欲しい!プレミアつくとかすごいよ!
画太郎先生得意の可愛い女の子が登場するも、今までではありえなかった女の子メンバーだけで物語が繰り広げられ、正に今風の萌えテイストを取り入れられています。
これにははっきり言って期待が高まりました!
やっぱり今は女の子だけが出てくる漫画が人気を博していますから…
今風だから長期連載になってくれるんじゃないか!?
しかし、そんな期待とは裏腹に1巻にしてキャラクターの設定が崩壊、外見は可愛い女の子ですが、中身はどんどん関西弁で怒鳴り散らすいつもの親父みたいなキャラクターに変化。
なんか怪しくなってきたと思っていたら、前作『世にも奇妙な漫画太郎』の『トラック轢かれオチ』をコピーして顔だけ差し替え、いきなりアパートから転げ落ちてトラックに轢かれて全員死ぬという意味不明なラストで物語が終了しました。
あのさあああああああああ!!!
ちゃんと描こうよ!!!
画太郎先生はできる人なんだから!!
ちゃんと描こうよ!!全部同じじゃないの!!
この漫画は再開のリクエストも高く、現在コミックバンチで『ミトコンペレストロイカ』として再連載されています。これが2015年現在、唯一の連載であり、末永く長期連載してほしいと願っています。
名作物語…!?罪と罰
その後、画太郎先生はドストエフスキーの『罪と罰』を漫画化しはじめます。
最初にこの話を知った時、
「えっ!?そんなことできるの!?」
と読者が心配にさせられたのですが、そんな心配をよそに『罪と罰』の連載は始まりました。
なんと表紙を自分で描かず、著名人に描かせて別の作品のように錯覚させるというとんでもない手口を使っています。
作者名も『漫F画太郎』にし、ドストエフスキーに無理やりひっかけようと必死の釣り針を出しておられます。
画太郎先生らしい常識外のスタイルです。
そして、『罪と罰』は画太郎先生の作品の中で唯一打ち切られず、最後まで走り遂げました。
なのに展開はいつもと同じコピーの連発で、打ち切られても打ち切られなくても、結局同じ展開になってるじゃねーかと思わせます。
下が完結の4巻です。
いつも通りの姿。
これでいいじゃん!!
まとめ
駆け足ながら、画太郎先生の歴史を追ってきました。
25周年の重み、画太郎先生にとってもひとしおだと思いますが、読者にとっても、こんなに長くこの飛び道具ひとつで活躍してるというすごい衝撃があります。
今後も先生のことを愛し続け、コミックを買って応援していきたいと思います。
画太郎先生最高!!