わかりやすいイギリスEU脱退の理由とその未来。今後はどうなる!?

世界中に衝撃を走らせている、イギリスのEU脱退。

なぜイギリスはEUを離脱するのでしょうか?

また、そもそも、EUとは一体なんなのでしょうか?

離脱によって起こる、いいことと悪いことにはどのようなものがあるのでしょう?

そして、離脱は今すぐできるのでしょうか? 誰かが認めたり否決したりするのでしょうか?

今回は、衝撃のイギリスEU脱退について、改めて最初からわかりやすく紹介いたします。

そもそもEU(ヨーロッパ連合)とは

london-1211303_1280

ヨーロッパというと、ぼくたちには『美しい国々』というイメージが強く、イギリス、イタリア、ドイツ、フランスなど、おしゃれで食べ物も美味しく、観光名所も豊富で、旅行先としても憧れている方々も多いのではないかと思います。

しかし、日本とアメリカが悲惨な戦争をしていたように、ヨーロッパでもドイツとフランスは壮絶な戦争を繰り広げており、ヨーロッパ全土を巻き込んで多くの死者を出すようになりました。

「もう戦争はやめよう!」

「みんなで仲良くするグループを作ろう」

という声から、1951年に作られた『ECSC』という連合が、EUのもととなっています。

『ECSC』の代表は弱小国ベルギーなのですが、これにももちろん理由があり、最強レベルのドイツやフランスを代表にしてしまうと、「なんであいつが代表なの?」とトラブルになることが分かっているため、あえて弱小国を代表にしているのです。

最初は6ヶ国が集まって始まった『ECSC』でしたが、平和を目標とする新しい法律の魅力に周りの国たちも次々に加盟していき、名前も『EU』と改め、現在ではヨーロッパ28ヶ国が集まる連合体となりました。

しかし、仲良しグループを作ったといっても、ちょっと前まで壮絶な戦争をしていたドイツやフランスもいれば、大金持ちで自分の道をいくイギリス、経済が破綻しかけていて援助ばかりしてもらっているギリシャなど、ひとくせもふたくせもあるメンツばかりがそろっています。

もともと複雑な事情の多い連合ではありましたが、そんな中でもEUによってヨーロッパはまとまり、アメリカとヨーロッパは強い結びつきを得て、ロシアや中国に対抗してきました。

しかし、EUにいることのメリットとデメリットが、だんだんと感情的にイギリスの中で釣り合わなくなり、EU脱退の道へと進ませてしまったのです。

一般市民が遺跡泥棒で10億円!ギリシャ経済破綻の行き着く先
経済破綻したギリシャで、一般市民が遺跡泥棒に!ギリシャに今何が起きているのか?経済破綻した原因を含め、わかりやすく解説いたします。

EUにいるとどんないいことがあるの?

tower-bridge-980961_1280

EUに入るためには、『コペンハーゲン基準』という3つの決まり事をクリアしなければ入ることはできない仕組みになっています。

  • 法律をEUの法律に合わせること
  • ある程度お金をもっていること
  • EUのみんなのためにいろいろできること

このコペンハーゲン基準はそれなりに厳しく、トルコなどはEUに入りたくてしょうがないのですが、法律の中に死刑制度があったため断られてしまい、最近は死刑をやめることによってEUに加盟をアピールしているのです。

EUでは法律がすべて同じなので、多くの国がひとつになって協力していけるはずだと考えられています。

また、義務ではないのですが、みんなで同じお金『ユーロ』を使って便利な世の中にしようとというのもEUの特徴です。

EUに入っていると、同じEUの国同士なら、商品を輸入したり輸出したりしても、税金がかからない仕組みになっているのです。

さらにEUは、自由にEU内のどこの国も行き来していいという『シェンゲン協定』を守っている国が多く、他の国で働きたくなったなら、いつでもなんの制限もなく自由にどこでも行ける仕組みになっているのです(イギリスは守っていないので検問があります)。

これにより、働く人たちは自分の環境を選ぶことができます。貧しい国に生まれたからといって、そこで我慢することはありません。

他の国に行ったら、他国の人間だからと差別され、結局は自分の国にいるしかないんじゃないかという心配もあるかも知れませんが、EUではその心配さえもないのです。

EUは原則的に、『他国の人間であっても必ず自国の人々と同じように扱うこと』という取り決めがあるため、差別的な扱いは許されないことになっており、完全なる平等を求められています。

若い人たちはこの取り決めのおかげで、自由な国で自由な職業を選び、可能性を広げることができ、EUの法律には人気がありました。

聞けば聞くほどよさそうな仕組みに見えますが、これらのEUの仕組みこそが、イギリスの半数の人たちにとって「EUなんかに加盟するんじゃなかった」という反発を呼ぶきっかけになっていったのです。

EUに入ってもいいことがない!という人たち

london-140785_1280

1990年にEUに加盟したイギリス国民にとって、最初に反発を呼ぶことになったのは、2004年から拡大した『EUの難民受け入れ』です。

「EUはよさそうだからうちも入ろう!」と10ヶ国もが一気に加盟した2004年、新メンバーのポーランドなどから、「ピンチだから避難してもいいでしょう、同じEUなんだから…」と莫大な難民たちがイギリスへと訪れました。

『EUでは国籍に関わらず、すべての人間を平等に扱わなければならない』という原則通り、難民であっても、自国とまったく同じ基準で対応しなくてはなりません。

最低賃金も、生活保護も、すべて同じでなくてはならないということです。

イギリス国民も、難民が数十万人であれば、国際貢献としてあたたかく受け入れたことでしょう。

しかし、2004年に一気にEU加盟国が増えてからというもの、なだれこんできた難民の数は、11年間でなんと300万人。

イギリスは全人口6,000万人という、日本の半分の人口しかない国です。

京都の人口が260万人ですから、300万人の難民は異常な多さだと言えるでしょう。

1億2,000万人の日本に置き換えて考えてみれば、突然600万人近い外国人を受け入れることになったなら、どうやって国民の反感なく受け入れられるでしょうか?

待機児童300万人の問題も解決できない日本が、近隣アジアの難民600万人を無事に受け入れることができるでしょうか?

イギリスはもともと外国人に対して優しい国であり、難民にもすぐに住むところや食べるところを提供したり、不法入国者ですら6ヶ月経てば働くことができるなど、その器の広さから移民や難民にとって猛烈な人気がありました。

そのあたたかさが仇になり、イギリスは受け入れられる限度以上の難民を受け入れることになってしまうのです。近年ではついにシリアからの難民も莫大に受け入れることになり、もはやイギリス国民はパンク寸前です。

キャメロン首相は2010年の選挙の際、「私を首相にしてくれたら、難民の受け入れは1年間に数万人くらいに抑えますから!」と約束して首相になったにも関わらず、2015年は36万人もの難民を受け入れることになり、こうした無力さも、イギリス国民を『離脱』へと向かわせる反発心になっています。

また、EUにいる以上、『EUのためにお金を寄付しなければならない』という義務があります。

EUにはギリシャなどのお金に困っている国々があり、貧しい国のために支援をすることはEUにいるための必要条件だからです。

イギリスは毎年1兆円を超えるお金をEUのために寄付していますが、EUへのお金や難民の受け入れが増せば増すほど、イギリスにはこう考える人達も増えてきました。

「イギリスにEUなど必要ない。イギリスはイギリスのままでやっていける」。

実際、イギリスは金融に非常に強い国なので、EUでも『ユーロ』を使わず、ずっと自分の国の『ポンド』だけでやりくりしています。

不利益が多いEUなど、もはや所属するに値しないという反発が広がっているのです。

自由なEU、パリのテロリストが自由に逃げた!

london-545183_1280

イギリスにとってもうひとつ決定的だったのが、『誰でもどこにでも行ける』というEUの理想的な法律が害をなしてしまったことです。

EUの取り決めはどれもアイディアとしては素晴らしいものであり、2012年にはノーベル平和賞を受賞したほどで、もしも人間社会がこうなれば理想だと考えてしまうようなところもあります。

しかし人間とは、そんな理想がうまくいってくれるほど賢い生き物ではなかったようです。

EUの『誰でもどこにでも行ける』という仕組みはテロリストに悪用され、パリの同時多発テロでは、犯人が国境のないEUを利用することで、警察にも行方がわからなくなるという最悪の失態を引き起こしてしまいました。

同時多発テロの主犯格であるイスラム過激派のアバウドは、どれだけEUの国境を抜けることが簡単なものであったかを自慢気に語っています。

難民、テロ、そしてギリシャなどへの莫大な援助金の支払い、これらが重なった時、EUを抜けるべきだという国民の反発は最高潮に達したのですが、当然ながら、イギリス国民の中には、EUを守るべきだという声も根強く存在しています。

今回のイギリスEU脱退が、イギリス国内でも深刻な問題になっているのは、賛成と反対がほぼ半々だからです。

どちらに決まったとしても半分の人々が不満を持つような決定を、なぜしなければならなかったのでしょうか。

イギリスはもともとひとつではない

souvenirs-107536_1280

日本のようなひとつの島国から見るとわかりにくい話なのですが、海外の多くの国は、もともとひとつであったというよりも、複数の国家がひとつになってできている場合が多いのです。

イギリスも、北側がスコットランド、南側がイングランド、西側がウェールズと分かれており、中世時代は戦争を繰り返していました。最終的にその3つが統合されたのが、現在のイギリスです。

しかし、もともとスコットランドは石油がたくさん採れる場所でもありましたから、最近になって「スコットランドは独立してもいいのでは?」という考えも生まれてくるようになりました。

スコットランドがひとつの国として独立すれば、手に入れた石油を自分のものだけにできます。

イギリスとして統合されている今は、わざわざ石油の利益をイギリス全土に分けなければいけませんが、もしも独立すれば、スコットランド国民の年収が17万円ほど増えるだろうと試算されているのです。

2014年には、スコットランドから「独立したい」との声がのぼり、住民投票が行われましたが、賛成と反対が互角のまま、ぎりぎりで独立しないということで話がつきました。

今回のEU脱退において、スコットランドは「このままEUに残るべき」だと主張しています。

EUには確かに問題点も多いですが、良い点も多く、何よりイギリスが脱退してEUがばらばらになってしまえば、誰にとってもいいことなんてないのではないか?

EUを離れるということではなく、EUを良くするという方法で考えていこう…。

これがもともとキャメロン首相の言うEU残留の発想でもあり、半数以上の人々の支持も得ていた主張です。EU改革へと動き出す中で、不満を持っている人たちをすっきりさせるために、けじめとして国民投票をしよう、という意味が今回の投票にはありました。

まさかこれが本当にEU脱退に繋がってしまうとは、キャメロン首相も夢にも思わなかったでしょう。

しかし、難民受け入れは年間数万人と約束しておきながら、去年36万人の難民を受け入れることになってしまった政治力のなさと発言の信頼性のなさ、更に『パナマ文書(税金をうまく逃れている人たちのリスト)』にキャメロン首相の名前があったことから、残留論もろとも国民の信用を大きく失ってしまいました。

時勢は離脱派へと傾いていき、今回の結果の責任として、キャメロン首相は辞任を表明しています。

また、こうなってしまえば、スコットランド独立問題は改めて再燃してしまうでしょう。

「イングランド側の人間が、イギリスはEU脱退すべきと言って脱退が決まった。しかし我々スコットランド側の人間はEUに残りたかった。もともと大量の石油があるから経済には困らない。イギリスから独立し、我々はEUに残る」

そう言い出してもまったくおかしくない状況が訪れてきているのです。

EUを脱退するとどうなってしまうのか

london-1465693_1280

イギリスがEUを脱退すると、残るEU加盟国の中で圧倒的に力の強いドイツがEUの中心となりますが、これによってこれまでバランスを保っていたEUが崩壊し、脱退国が続出するのではないかと危惧する声もあります。

最も恐ろしいのは、このためにヨーロッパがばらばらになってしまうことで、理想論であっても、ヨーロッパがひとつになるために協力できないのかと言われているわけです。

また、イギリスは世界トップレベルに金融が発展した国であり、ロンドンは世界のお金が集まる中心地でもあります。

イギリスがばらばらになるのなら、当然世界の企業たちは、「今ここにお金を使うのはやばそうだ」ということでイギリスから撤退します。

イギリスの経済がひとたび混乱すると、イギリスをお得意客としている中国などは大パニックに陥ることになるでしょう。

それは中国をお得意客としている日本も含め、必ず全世界に広がり、経済に深い衝撃を与えます。

ヨーロッパの理想のために作られたEU、ノーベル平和賞まで受賞したそのEUが、ヨーロッパの大半を占めるまでに拡大したところで、破綻への足音が聞こえてきました。

EUはこれからどうなっていくのか、決して海の向こうの出来事では済まされない状況になっています。

本当にイギリスはEU脱退できるのか

tower-bridge-1016675_1280

今回の結果は、国民投票でEU脱退が決まっただけであり、イギリスはまだEUに加盟したままです。

また、これは直情的になった結果なのかも知れませんが、離脱することは声高く叫ばれるものの、EU離脱後どうするのかというところまで計画を立てている離脱論者が非常に少ないという現実があります。

EUから脱退する国は初めてであるため、すべてにおいて大変な苦労をすることになるでしょう。

今後イギリスはEUと交渉して、まずは離脱を認めてもらう必要があります。

ただし、イギリスの離脱を、EU加盟国27カ国のうち20カ国以上が賛成すればという条件つきになります。また、小国ばかりの了承を取り付けてもだめで、賛成国がEU全体の65%以上の人口があることという条件もあり、これらは2年以内にクリアしなければなりません。

また、イギリスとして独立する以上、すべての貿易協定を結び直す必要があり、その数は80カ国以上。EU法がすっかり浸透したイギリスにとって、法整備も相当に大変なもので、これらにかかる時間と費用は莫大です。

しかし、当然ながら、「残留すればいいことがある」とさんざん謳ったあげく脱退したのですから、どれだけの費用と手間とリスクがあっても、それなりの「よいこと」を国民に示さなければならないのですが、そうもいかなかったようです。

脱退派の政治家たちは、あれほど国民を煽ったにも関わらず、『移民ゼロ』どころか、『移民を減らせる可能性があるかも知れない』という非常に曖昧な言い方をするようになりました。

これはもちろん、EUを脱退したからといって、EUの国々とは今まで通り仲良くしなければなりませんし、今後のさまざまな兼ね合いを考えれば、『移民ゼロ』などとはとても言い出せない状況になってきているからです。

また、EUを脱退すれば、毎年EUに収めていたお金も余ることになり、毎週480億円を国民年金などにまわせると謳っていましたが、これも『約束できない』という不確かな回答に。

脱退しても現状はなにも変わらないというのなら、騙されたと感じる国民も増え、『国民投票のやり直し』を願う署名すらも行われています。

しかし今回の一件によって多くの国々がEU脱退を検討しだし、スコットランドどころかウェールズでさえも、イギリスからの独立を狙う動きもあります。

多くの歯車は一気に動き出し、その果てに本当に美しい未来が待ち受けているのか、まだ誰にもわかりません。

スポンサーリンク

最後まで読んでいただきありがとうございます。記事が面白かったらシェアしていただけると嬉しいです。

フォローする

スポンサーリンク