ネット上で卒業できる学校、ネットで診察してもらえる病院!?世界はどう変わっていくのか

近年、ITが猛烈なスピードで進化するにつれ、さまざまな業種がデジタルに入れ替わってきました。

いまや、電車の中で新聞を広げているおじさんはほとんどいません。スマートフォンで最新の情報をチェックするのが普通になっています。

買い物の形も変わり、何軒も店をはしごして最安価格を見つけなくても、『価格コム』と検索するだけでいい時代に。

更には学校や医療にもインターネットが導入され始めており、通学しなくてもネット上で卒業できる学校、通院しなくてもネット上で診察、薬は郵送してくれる病院まで登場しています。

今回は、ネットで卒業式まで行われている明聖高等学校『サイバー学習国』と、遠隔医療の今を紹介しながら、訪れるデジタル社会について考えていきたいと思います。

ネットで通学、卒業、明聖高等学校

明聖高等学校の『サイバー学習国』が開校したのは2015年4月と、まだ始まったばかりで間もないのですが、その斬新さに多くのメディアから取り上げられていました。

やはりその特徴は、若者に人気の『アメーバピグ』と学校をミックスしたような学習スタイルにあると言えます。

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入学してすぐ生徒たちが作るのは、まず自分の分身となるアバター。

さらに勉強を進めるほどにポイントがもらえ、それによってアバターをさまざまな形にアレンジすることができるなど、『アメーバピグ』に則ったシステムが取り入れられています。

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授業は若者向けにかみ砕いてわかりやすく。公式ページにはデーブ・スペクターの特別授業などが公開されていました。

わかりづらいところはメールや電話でいつでも相談でき、個別スペースとなる『マイアイランド』に友達を呼んで遊ぶこともできると、若者のニーズに応える仕組みとなっています。

授業料が制度によって免除されるため、実質3年間でたった15万円という破格の学費。

スマホさえあればどこでも授業が受けられ、授業は1コマ20分、卒業式までネット上で行われるといいます。

通常は通信制でも、年間20日以上は実際に通学しなければ認められないのが通信制高校ですが、サイバー学習国では年4日という少なさで認可されており、多くの事情がある生徒へ通学のハードルを低くしているということです。

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■学習はかなりわかりやすく意欲を持ちやすくなっている。学習で得られたポイントを使う農園ゲームなどもあり、年4日の通学日では、学校が所有する農園でリアル農園体験に繋げるなどの試みも。

ネットの学校はいいのか悪いのか

当然ながらサイバー学習国が開校された際、世間から寄せられた意見には厳しいものも多かったのが実情です。

しかし現状、小中高におけるいじめの認可件数は、認可されているだけで2016年にして過去最大、子どもたちが命を絶ったり、不登校になるなどの社会問題は増えこそすれ減っていくことはまったくありません。

日本が抱える最大の問題は、一度社会のメインストリームを脱落してしまった場合、受け皿や復帰方法がほとんど与えられていないということです。

社会に参画できる人々の数を増やすということは、最終的に誰もが豊かになる道に通じているので、新しい受け皿や救済策が作られること自体は賛成すべきではないかと考えています。

議論は新しさに対してではなく、その運営方法に穴がないのかどうかで語られるべきでしょう。

新しい学校の運営は、既存の学校の運営よりはるかに難しい

誰もが直感的に理解できることとして、この学校の運営は通常の学校の運営よりもとてつもなく難しいという点が挙げられます。

通常の学校は、すでに体制が確立されている上に、誰もがかつてはそのサービスの経験者であったため、それぞれの再現性を持っているという利点があります。

しかしなにもかも新しい学校を作ると、教師には勉強以外に『運営』という大きなスキルが必要となります。

こうした教師が多く在籍しているのかどうか、やはり保護者は心配になりますし、「耳障りのいい言葉で子どもの関心を引くのはいいが、本当に中身はあるのか」と不安な声がささかれるのは当然のことでもあります。

実際に運営は相当難しいでしょうし、むしろ開校数年は教師の方が教えられることも多いのではないかと想像できます。サイバー学習国について本当の評価が下せるのは、少なくともあと数年後になると思います。

ネットで在校生の声を聞いてみると…

ぼくはサイバー学習国に在籍していませんし、息子も小学生ですので、今のところは在籍の予定はありませんが、昨今の子どもを取り巻く社会問題を考えると、『広く子どもたちのために受け皿を作ってほしい!』という思いは非常に強いものがあります。

サイバー学習国に実際に在籍している方々の生の声が聞きたいと、2ちゃんねるなど多くの場所から在籍している方々の声を拾い集めてみました。

その声だけですべてを知ることはできないと思いますが、おおむね先生や学校の制度に満足されている方が多く、「楽しい」「ゲームがおもしろい」「先生はよくやってくれている」…と、不平不満はあまり拾えなかった気がしています。

もちろん、不満を声に出して言うことのできないタイプの子たちも世の中には存在していますので、ひとつの目安にしかなりませんが、在籍していない人が2ちゃんねるで、「こんな学校が自分の時代にあれば」と言っていたのも印象的でした。

子どもたちのためにどうあるべきなのか

保護者にとって、新しい学校はどうしてもいぶかしく疑って見てしまうものですが、本来ならば法律に則り、子どもが学習する権利を守り続けるのは大人であり国であるはずです。

サイバー学習国がその答えになるかどうかはいまだ未知数な部分があります。

しかし大人は、常に子どものために受け皿を作る努力をすべきであり、子どもが本当に困っているとき、救ってあげられる場所を作ることが絶対に必要なのです。

アメリカではフリースクールやホームスクールが発達しており、社会のメインストリームから脱落したことが問題なのではなく、復帰させるための手段を考えることにフォーカスが当てられています。

サイバー学習国のような新しい学校が賛否両論を受けている背景もわかりますが、今後、子どもたちのための制度は絶対に多様化していく必要性があると言えますし、的確な運営方法と教育経験の裏付けをもって、営利目的ではなく新しい受け皿が作られていくことを願ってやみません。

自宅でSkype診察、薬は郵送で送られてくる、遠隔治療

2015年から始まった『遠隔治療』。

今までの常識では考えられないものではありますが、これは特定の病院がチャレンジで始めたものではなく、厚生労働省による規制緩和がきっかけです。

資料■情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について

この規制緩和により、特定の症状において、病院に行かなくてもテレビ電話などで診察を受け、薬は郵送で受け取ることができるようになりました。

もう大病院で待たなくても、自宅にいながら医師の診察を受けられるというのは、人によっては大変な朗報であると言えます。

難病を持っているぼくの妻もそうなのですが、大病院での長い待ち時間の末、診察は「今月どうですか」のほんの10分のみ、薬を受け取るのも量が多くて手間なので、すべて自宅で賄えることは大変うれしいことです。

初診や急病は不可

当たり前のことではありますが、遠隔治療において想定されているのは、すでに信頼関係が構築された医師と患者が、「いつもの薬渡しておきますよ」という状態において交わされる治療だということです。

初めて診察を受ける方、急病の方などは遠隔治療を受けることができません。

生活習慣病など、持病を継続して治療する必要がある場合、非常に役に立つ方法だということですね。

お年寄りであれば、誰でもかかりつけの医師によく診てもらっていることでしょう。田舎の通院事情は深刻ですが、テレビ電話診察であれば、いつでも在宅で安心を得ることができます。

日本でもそのような事情ですから、土地が広いアメリカでは更に深刻であり、高齢者や農村部の人々のために遠隔治療の進歩が強く期待されています。

常に専門医に診てもらえるメリット

遠隔治療最大のメリットは、専門医同士で連携できるということです。

かかりつけの町医者が診ることのできる病気は限られていますが、遠隔治療であれば、「これはちょっとおかしい?」という患者さんの様子やデータを、すぐに病院の中で連携して診ることができます。

遠隔治療を進める理由のひとつであり、最近は人工知能による診察なども進められていますが、人工知能も遠隔治療も、誤診なく治療を進めることができるようになるための仕組みづくりの一環です。

もちろん患者側も、血圧計など最低限の医療器具は自宅に準備しておく必要があります。

莫大なコストをクリアすることがカギ

遠隔治療は、患者側にもテレビ電話の環境があることを要求されますが、医師がいない過疎の村ほど遠隔治療を必要としているというのに、過疎の村にはネット環境が乏しいというジレンマがあります。

アメリカでは遠隔治療を進めるべく、政府から通信インフラを整備するための助成金が出され、農村部に遠隔治療を浸透させようと保健社会福祉省や農務省が努力しています。

日本においても同様のジレンマがあり、これらをどのようにして改善していくかが今後の課題となるでしょう。

Skypeが簡単に使える医療用のタブレットなどを作れば、お年寄りでも遠隔治療が容易になると思いますが、やはりそのコストは甚大です。

最近では一流医師の手術を再現して受けられる手術ロボットなどが開発されており、どんな田舎に住んでいても中央の質の良い医療を受けられるべきだということは、IT時代の重要なキーワードになっています。

現在は始まったばかりですが、いずれ遠隔治療は医療のひとつの形として確立されていくでしょう。

IT時代をどう活かすか

学校や医療が遠隔になるというと、やはり今までの常識ではにわかに受け入れがたい部分もあると思います。

しかし生き馬の目を抜くビジネスの世界では、すでに『オフィスを作ることはコストがかかるので無駄である』という考え方が強くなっており、『ネットでできることはネットでいいのではないか』と世界的に在宅勤務が増えてきている時代でもあります。

出勤するならVRでやればいい、というジョークを海外の本で読みましたが、社員をひとつのオフィスに置かず、テレビ電話で会議出席させる企業も増え、日本にもその流れが広まりつつある状況です。

今後はIot化が進み、すべてのものにコンピューターとインターネットが埋め込まれる時代が必ず訪れます。

関連記事:未来は必ずこうなる!家電どころか牛乳パックまで、全てがネットに繋がる『Iot』

思わず冷たい未来を想像してしまいますが、それも活かし方次第です。

もはや我々はITから逃れることはできず、それをいかにして自分の生活と人生に活かせるのかを考えなくてはならない時代になっているのです。

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