マトウという男がけわしい山道を馬に乗って歩いていると、目の前で足の悪そうな旅人が、びっこをひきながら歩いているのを見かけました。
旅人は感謝して馬に乗ります。
マトウが旅人のために、馬をおりて花を取ろうとすると、いきなり旅人は馬にムチをあててその場から走りだしてしまいます。
マトウは馬を盗まれ、山道に1人置いてけぼりにされてしまいます。
そのうち、雨が降り出し、雷がなり、どうしようもなくなったマトウは、近くのほら穴の一番奥に隠れました。
暗闇の中、ウトウトしていると、入口の方で3匹の動物たちが話しているのが聞こえます。
マトウはトラが指差す『大石』を記憶しました。
わたしは最近、林の中のネズミの芸を見て過ごしてますよ。『12枚の金貨』をクルクルまわして、可愛くておもしろいですよ~
そんなアニマルトークに花を咲かせたあと、動物たちはほら穴を離れていきます。
マトウはほら穴を出て、まず目の前の木の下にある『葉っぱ』を拾いました。
そして林の中に行くと、キツネの言うとおり、『12枚の金貨』をまわして遊んでいるネズミを発見します。
マトウが「おはよう」と声をかけると、ネズミは金貨を置いていちもくさんに逃げ去ってしまいました。
マトウは残された12枚の金貨をもらい、『谷間の草原』に向かうと、羊飼いのおじいさんが3,000頭の羊を飼って暮らしていました。
おじいさんは喜んで番犬の子犬を買い戻しました。
番犬は、二度と会えないものと思っていた我が子が戻ってきて、感動のあまりに『涙』を流しました。
マトウは、その涙を『葉っぱ』で受け止めます。涙と葉っぱをまぜあわせると、不思議な薬ができました。
数日後、マトウが大きな町に着くと、お城の前で人だかりができています。
そこまで言うなら…と王様はマトウに姫を任せることにしました。
マトウが犬の涙と葉っぱの薬を飲ませると、お姫様はうそのように病が治ってしまいます。
マトウは、トラが話していた『大岩』の上に城を建設してもらうよう願います。
建設のために国中から大工や職人が集まりますが、なんとその中にはマトウから馬を盗んだ『旅人』もまじっていました。
しかし旅人は、まさか城の主があの馬の若者だとは想像もせず、気づくようすもありません。
マトウは旅人に特別に呼び、ごちそうやお金を与えます。
旅人は、あまりのことに震え上がりました。
しかしマトウはおだやかな顔で続けます。
そう言ってマトウは、ほら穴の出来事を旅人に言って聞かせます。
旅人はその夜、ひそかにほら穴に向かいました。
旅人がほら穴の奥で息を潜めていると、マトウの時と同じように動物たちがやってきます。
3匹はいっせいに穴の奥にかけこみます。
そして隠れている旅人を見つけると、旅人を噛み殺してしまいました。
解説
世界の昔話をひもとくと、その国の文化が見えてきます。
日本の昔話を見ると、日本人がつつましくもまじめに生きてきたことがわかりますが、このアフガニスタンの昔話は、日本でいうと犬に「ここほれワンワン」と宝を教えてもらう『花咲かじいさん』のお話に似ていますね。
テロ行為で世界から恐怖されているアフガニスタンですが、我々と同じ観点で、このような豊かな昔話を作る歴史があったことが思い知られます。
現在のアフガニスタンは、終わりなく続くテロ行為により、外務省の危険度レベル4(最高)に定められ、即刻退避勧告と渡航の取りやめを謳われています。
このように人と人がいがみ合う世界は悲しいものですが、この物語で主人公が「だました人を許す」という寛容な心を見せているように、世界の戦禍のなか、いつしか憎しみよりも許しがまさってくれることを願ってやみません。