宮崎夏次系 『変身のニュース』

変身のニュース (モーニング KC)

『この人にしか描けない!』の極み

ぼくは、『この人にしか描けない!』『この人にしか作れない!』という作品が好きで、そういう意味でジョジョの奇妙な冒険なども大好きなのですが、この宮崎夏次系さんも、『この人にしか描けない』の極みを行く新しい才能だと思います。

2010年にデビューされた宮崎さんですが、短編を中心に発表されているものの、どれも個性的な短編ばかりで、その描写は『現実と一番遠いところを描いているのに、なぜか誰もの記憶の中にあるノスタルジックな思いを動かす』という、とてつもなく優れた技術と感性を持たれています。

上にある表紙の絵ひとつとっても、雑然とした建物の前に、鼻血を止めてる最中?の水彩の女の子という、このセンスひとつをとっても天才だと思ってしまいます。

今風の絵かと言われたら、そういうわけではありません。

お話がキャッチーかと言われたら、そうでもなく、逆に『なんでこの話にしようと思ったの??』というくらい不可解なところからテーマを持って来られていますが、それがまた宮崎さんの独自の切り口で、どのお話も珠玉の作品に仕上がっています。

漫画がない時代なら、小説家として名前をはせていたのではないかとも思わせます。

吉本ばななさんのような切なさ

その昔、小説家のよしもとばななさんがデビューした際、その切ない切り口と独自の感性で、一大ムーブメントを築き上げたものです。

宮崎さんもそんな感性を持たれた方で、読んでいると作品の中にトリップ出来るような感覚、本当にすばらしいと思います。

宮崎さんが漫画家でよかったと思うのは、絵のセンスも優れているので、魅力的な絵がたくさん楽しめること。

男キャラが異様に雑だったり、下書きなんじゃないの?と思われる絵もまじっていますが、女性キャラはどの人物もとても魅力的に描かれています。

あっというまにヴィレッジバンガードでグッズ化されたことも頷けるセンスの良さです。

まだ宮崎さんはメジャーではありませんが、今後ともに『この人しか描けない』という分野での活躍を期待できる、類まれな才能を持った漫画家の1人です。

説明すると言葉が負けるので、試し読みはいかがですか?

ブックレビューなのですが、説明すると言葉が負けるので、説明したくない作品です(笑)。

いくつかの試し読みがネット公開されていますので、読まれたことのない方はぜひそちらを読んでみてください。

『僕は問題ありません』

ぼくが一番最初に購入した単行本なのですが、このお話を見て、すぐ虜になりました。

『変身のニュース』

このお話はとても素敵です。宮崎さんの魅力が詰まっていると思います。

『夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない』

これもまたいいですね…。ぼくは宮崎さんの作品のルーツがどこにあるのか真剣に知りたいです。子ども時代からの作品をアップしてくれないかな…?

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