ホーキング博士の新説
人類の頭脳とも言われる、車いすの物理学者・ホーキング博士のブラックホール新説が発表されました。
新しい理論によると、これまでブラックホールに飛び込むとどんな存在でも消滅するとされてきたものが、「やっぱり消滅しない」。「てゆーか二次元になる」。「てゆーかパラレルワールドに行く」というまったく新しい理論。
二次元になってパラレルワールド!?
ホーキング博士、なんか日本のラノベ見た?
角川スニーカー文庫でデビューしてようとしてない?
そんなことを聞いてみたくなるホーキング博士の新理論ですが、一体なにが言いたいのでしょうか?
今回は宇宙に関する新しい理論を、宇宙にまったく興味が無い方でも楽しめるよう、わかりやすく記事にしてみました。
ブラックホールの矛盾
これまでブラックホールというものは、圧倒的な質量を持ち、あらゆるものを飲み込み、すべてを消滅させると言われてきました。
実際に星を飲み込む姿が観測されておりますし、『飲み込んで消滅させる』という理論も、誰もが納得するようなしろもので、ホーキング博士自身、「ブラックホールはなにもかも消し去ってしまうよ」という理論を発表してきました。
しかし量子力学によると、「どんなものでも消えはしない」と言われており、「消えるの!?消えないの!?どっちなの!?」という矛盾がずっと起きてきたわけです。
そのブラックホールはいったいどうなってるの!?
お前の説のブラックホールだろ、ちゃんと責任取って最後まで説明しろよ!!
と、数多くの研究者の間で、この矛盾について研究されてきました。これを、ブラックホール情報パラドックスと言います。
数多くの議論の末、ブラックホールに飲み込まれたとしても、飲み込まれた情報は消えず、残るだろうという見解が圧倒的になっています。ホーキング博士も、ついに自分の説のあやまちを認める結果になりました。
新しい説はどうなった?
2015年8月にホーキング博士が発表したところによると、
「ブラックホールに飲みこまれると消えるといったが、すまんあれは嘘だった」
「ブラックホールに飲み込まれると、ブラックホールの表面にピッタァーと張り付く2次元みたいなホログラムのようなものになるのでは」
「ブラックホールが蒸発した後、我々のいる世界とは違う、他の宇宙に行くと思う」。
このように、これまでのブラックホールが暗黒空間であるという理論とは違う、ブラックホールの中に取り込まれた情報が保持され、かつ別の宇宙に行くという見解を取っています。
気になることが山ほどある理論ですが、若いマンガ世代的に一番気になるところはやはりここでしょう。
- ホログラムになるとは!?立体映像のようなものなのか、アニメのセル画みたいなものか
- 別のパラレルワールドでは、「ドラえもん」や他アニメで見たような、突然勇者になるような展開があるのか
ブラックホールに吸い込まれるだけで、突然アニメのセル画になり、その後パラレルワールドに行って勇者になったら、日本ではブラックホールに行くツアーが組まれるでしょう。
人によっては、ブラックホールに吸い込まれるのはただのご褒美だと考える人もいるはずです。
しかし当然ながら、世の中そんなに甘くはありません。
全部素粒子レベルでの話
当然ながらブラックホールに吸い込まれた後のことは、すべて素粒子レベルの超ミクロな世界での話で、きれいに人間の形のまま、このような現象が起こることはありません。
不死身の出川哲朗がいたら番組の企画で行ってしまうかもしれませんが、まともに戻ってこれるようなものではありません。
そしてそもそも、ブラックホールに行く事自体がとてつもなく困難なのです。
一番近いところで5440万光年
地球から一番近いところにあるブラックホールは、おとめ座A(M87)銀河にある巨大ブラックホールですが、ここに行くまでに5440万光年かかります。
光年というのは、光の速さで進んで5440万年かかるということです。
ホモ・サピエンスが地球上に登場したのが20万年前ですから、ホモ・サピエンスが今の人類の文明を作るまでにかかった時間の272倍をかけて、ようやく光がブラックホールまで到達できる距離だということです。
もちろん人間のロケットはこれよりもっと遅いので、とてつもないほどの時間がかかります。
はっきり言って、不死身の人間がいて「5440万年かけてブラックホールの謎をとくぜ!!」とブラックホールに旅立ったとしても、到着した頃には、「その話どうでもよくなりましたわ…」と言ってしまうレベルの遠さです。
ちなみに5440万光年の距離を観測するということは、5440万光年から届いた星の光を見ている、ということです。
光が届くまでに5440万年かかりますから、観測している時点でそれは5440万年前の情報です。
観測した瞬間に、光の速さでその方向に飛び立っても、到着まで5440万光年かかりますから、発見からあわせて1億880万年の時間が経過します。
そんな時間をかけて目当ての場所に到着しても、1億万年経過したその場所ではいろんなことが変わっており、へたすると「1億年のご愛顧ありがとうございました!1000万年前をもってサービス終了しました!」などと言われてもおかしくないですね。
宇宙の旅はかんたんなものではないのです。
それでも人は宇宙に行く
昔からよく言われている議論に、「そんな行けもしないところの研究にお金かけてどうする」というものがありますが、実際に日本の宇宙開発も、何度も「やめたら?お金ないのに!」と言われてきました。
宇宙が好きな人間にとっては、「そこに宇宙があるから」という登山レベルの理屈でいいものの、いまどきこんなものではご家庭の奥様も納得させられません。
「宇宙のスーパーではお米が1キロ5円で売ってる!」などの、明確なトクする理由を用意しろというわけです。
しかし、日本よりも経済的に小さな国が、積極的に宇宙開発をする時代になってきています。
それはなぜなのでしょうか?
現在は火星探査が積極的に行われていますが、アジアで初めて火星の周回軌道に到達する探査機を送ったのは、技術大国の日本ではありません。
日本よりも遥かに貧しいインドの探査機でした。しかも、アメリカの10分の1のお金しかかからず、日本ですら失敗したものをたった1回で成功したのです。
ちょっとむずかしい話、宇宙開発の意義
現在、バングラデシュ、ラオス、インドネシア、マレーシア、タイ、ヴェトナムなど、経済的に日本よりもずっと劣る国々が宇宙開発を拡大し、かつ成果を上げる時代になってきています。
なぜ日本よりも貧しいのに、宇宙開発などに経済力をそぞくのか?
それは、技術の進歩により大きな社会の進歩があるからです。
インドでは現在、独自の衛星ネットワークを持っていますが、宇宙のみならず気象観測にも使われるこのネットワークで、かつては1万人以上が死亡したサイクロンを早めに予測できるなど、多くの技術的進歩による結果が出ています。
また、インドの社会的問題である、学校に通えない子どもたちのために、遠隔教育システムを構築できる基礎となり、製造業の後押しをするだろうという声もあります。
さらに直接的にインドの経済を潤す理由が、『衛星発射ビジネス』です。インドの衛星打ち上げシステムは95%の成功率を誇っており、他国から委託された衛星を安く打ち上げるビジネスを行っています。
国民の3分の1が世界貧困線(1日に約1.25ドル以下で生活すること)以下の生活を送っているインドで、それでも国家予算を投じる理由は、これらの『お金が儲かる』、『社会が進む』という理由と、国のちからを示せること、国民が自国に自信を持てるようになるためなどが挙げられるでしょう。
日本ですら失敗した火星への周回軌道入りを、たった1回で成功させたところに、インドの宇宙開発における総合力の高さが垣間見れます。
たとえ宇宙に安いスーパーがなくとも、宇宙開発には社会にとって意義があるのです。
意義のある宇宙開発を
完全に話がそれていたのでブラックホールに戻しますが、パラレルワールドに行けるというのは誰にとっても興味深い話です。
実際にそんな体験ができるかどうかは別として、これまでも物理学では、何度もパラレルワールド(別の宇宙)について仮説が唱えられてきました。
ホーキング博士が言うには、「二度と戻ってくることができない以上、絶対に行きたくない」といわしめる事実でもあります。
しかしこのホーキング博士、宇宙人についても、「友好的かどうかわからない以上、絶対に会いたくない」というコメントを残しています。
この、自分から話をふっておいて、いつも絶対嫌だという感じ、なら言うなという印象ではありますが、科学者の慎重さと思慮深さを感じさせますね。
今回のホーキング博士の新説では、ブラックホールは宇宙と宇宙のつなぎ目となる可能性もあると唱えておられました。
パラレルワールドに、我々が生きている間に行けるようになることはないでしょう。
構築されているものが違う以上、永遠に存在さえも認識できないかもしれません。
そもそもそんなことを考えてる暇があったら、さっさと仕事しろといわれる世の中でしょう。
インドの宇宙開発は、低予算でありながら社会への良い影響が大きく、世界から注目されていますが、意義のある宇宙開発は人の生活を満たします。
どんな物事にも多様な側面があります。
宇宙開発が無駄にならず、人類にとって意義のある形になるように進めていく。
宇宙を考えられるようになった人類にとっての責任であるとも言えるでしょう。
ぼくは宇宙開発の波状効果として、人間の視野がもう少し広がり、多くの人間にとって優しくし合える世の中になったらいいなとも願っています。