2004年から2006年までのたった2年という連載期間ながら、今も根強いファンを持ち、繰り返し映画化もされている『デスノート』。
新世界を作りたいという夜神月は、天才でありながらなぜ負けてしまったのでしょうか。
また、どうすれば彼の望む新世界が作れたのでしょうか?
管理人はデスノートに散財し、コミックは軽く100回は読み返した大ファンであり、なおかつ三度の飯より推理小説が好きな推理小説ファンでもあります。
今回は、デスノートファンの愛の力と、推理小説を読む中で培ったトリック力を駆使して、夜神月が勝てた方法を徹底考察します。
いきなりですが、最初の時点でもうすでに厳しい
『デスノート』は夜神月とLの頭脳戦であり、それが本作の見どころなのですが、いくつか夜神月が徹底的に追い込まれてしまった原因があります。
それは、月が挑発に弱く、煽り耐性ゼロ、ちょっとなにか言われると真っ赤になって反撃してくるという幼い性格です。
もちろん、このような幼さを純粋さとして持っているからこそ、「優しい人だけの新世界を作りたい」という発想になるのですが(普通の人なら、ニアの言うとおり周囲の気に入らない人を数人殺して終わるでしょう)、これは月にとって致命的な弱点でもあります。
はっきり言ってしまうと、最初に出てきた偽者L、『リンド・L・テイラー』を殺してしまったのは最初にして最大の失敗です。わざわざ自分が見つかるきっかけを作ってしまっています。
デスノートはその性質上、秘匿性が高く、何もしなければ決して誰にも正体がばれることはないという最終兵器です。
本来なら、普通にカバンに入れておいても、人に見られても、殺人ノートだとは思われないでしょう。
表紙こそ『デスノート』と書いてあり確かに怪しいですが、日頃から「我は闇に染まりし者…」とか発言しておけば、大学で誰かに見つかっても「厨二野郎がノートに細工までしてる」とドン引きされるだけで済むというすぐれものです。
■誰もここから事件につなげられない最終兵器。厨二グッズとして利用できる。
それは冗談としても、デスノートにカバーでもかけておけば、もうまったく普通のノートですし、破っても破っても再生されるので、書いた端から処分していけば証拠すらも残りません。
デスノートを使うなら必ずそう使うべきです。
少なくとも、過去に使った痕跡はすべて破って燃やし、自分の手元に絶対に証拠を残してはいけません。推理小説なら100%の掟です。
夜神月は机の引き出しにトラップ二重底を作り、「誰かが見つけたら証拠隠滅に燃えてしまう」という仕掛けを作っていましたが、自分で書くたびになぜ破いてライターで燃やさなかったのかと疑問になってしまいます。
(C) 大場つぐみ、小畑健、集英社
■ドヤ顔で「証拠隠滅のため焼失」を語っているが、トラップなど仕掛けなくても、毎ページ自分で燃やせば安全でかんたんに済む。もしも地震が起きた場合、トラップが無駄に発動して意味もなくノートが燃えてしまう可能性も。
この世の誰にも見つけられないよう秘密にできるノートなのに、堂々と挑発に乗ってしまい、Lに『東京在住』など尻尾を掴まれてしまう点、最初からかなり厳しかったといえます。
デスノートは最強であり、その気になれば、ノートを完全に隠すことはいとも簡単にできるからです。
ノートを完璧に隠せる方法とは
もしもノートの存在を完全に隠蔽できたのなら、誰も夜神月を捕まえることはできなくなるでしょう。
そもそも、デスノートは夜神月の最大の武器なので、決して人に気づかれてはならないのです。
誰にも見えないように書き、1ページごとに破って燃やすというのは当たり前としても、その様子が誰かに見られる機会がゼロだとは言えません。家に置いていて家族に見られることもありますね。
ゆえにデスノートのページがいくらでも増えることを利用して、半分以上を本当の学習ノートとして使ってしまえばいいのです。
それも外国語の学習ノートとして、なるべく少数民族が使っている言語話者の少ない言語を選んで使います。大学では外国語学を学べばいいでしょう。
そしてノートにカバーを接着剤で貼り付け、『ミャオ語学習ノート』(※ミャオ語:ベトナムのモン族の言語)と記入した上で『ミャオ語』を実際に学習し、普通にノートに書いていきます。
半分以上がミャオ語で埋まり、誰の目にもミャオ語学習ノートになったなら、ニュースを見ながら犯罪者の名前をミャオ語で記入していくのです。
たとえ突然のハプニングで誰かに見られてしまっても、「またミャオ語勉強してんのか」と言われるだけですし、犯罪者の名前を書いた後は、そのページは破り捨てて燃やせば、誰の目につくこともありません。
仮にノートを盗まれても、「変なの」と言われて捨てられるだけです。
そもそも、デスノートという怪しい外見なのに日本語で普通に使っているから悪いのです。推理小説なら、一番最初に「なにやってんだ!!」と読者に怒られるポイントです。
(C) 大場つぐみ、小畑健、集英社
■ドヤ顔パート2。自分の策を天才的に発揮できてよかったが、ここまで細かく殺人の状況を記入した上、処分もせずにずっと残しておくと、もはや『俺が犯人です』という独白ノートと変わりなくなる。
一見して誰にも分からない言語で書き、書いたらすぐ破って燃やすのが最善の使い方なのですが、夜神月はなぜか全記録をそのままきれいに残しており、12巻あたりではノートが証拠でピチピチになっているくらいです。
後任の魅上も同じことをやっているので、ふたりともそういうのが好きなのかも知れません。完全犯罪をしようとしているのに、どうにも間の抜けた二人です。
(C) 大場つぐみ、小畑健、集英社
■左ページの一行目どころか、全部証拠だらけ。見つかった時点で絶対に言い逃れできないほどの証拠があふれている。怪しさ以外に表現できるものがなにもないノート。ページがいくらでも増えるんだからさっさと破って燃やすべき。
では、彼らの好みでノートに記録をすべて残しながら、犯罪者を裁きつつ、ノートの存在を隠し通すことができるのか? 無理難題な注文に見えますが、これも実は簡単に可能です。
言語学習の一環として、ニュース書き起こしを行う
夜神月の趣味に沿い、デスノートの記録をすべて残しながら、ノートをごく普通に生活で使い、それでいて完璧に隠蔽しきる方法をご紹介します。
まず、ミャオ語でもなんでもいいのですが、とにかくたくさんの日本語以外の言語を学ぶことにします。英語、イタリア語、ロシア語…数が多いほどいいです。
そして、それぞれの言語ごとにノートを買い、『毎日学習、○○語でニュース書き起こし』というカバーを作って接着剤で貼り付け、ここにテレビのニュースを日本語以外の言語で書き起こしていきます。たくさんの英語学習ノートができあがりました。ただしそのうちの一冊の中身はデスノートです。
書く内容として、犯罪以外のニュースも必ず書き起こします。するとノートの内容はこのようになります。
○月○日、○○首相、アメリカ訪問
○月○日、新しいケータイ電話が発表
○月○日、殺人事件が起きる、容疑者は○○・○○ ←ここだけフルネーム
○月○日、奈良であじさいが咲き誇る
こうすることで、外見上は完全に複数ある語学学習ノートのひとつ、たとえその言語が読める者が見たとしても、「ただのニュースの書き起こしじゃないか」と考え、殺人ノートだと発想できる者はいないでしょう。
犯罪者の名前のみフルネームで書くのがみそで、もしも全員の名前をフルネームで書いてしまったら、首相までデスノートの被害を受けてしまいます。
芸能人などはあだ名や名字のみで書き、犯罪者のみフルネーム記入すれば、何の疑いも持たれずにノートを所有することができるでしょう。
ぼくはいまだに、月がデスノートをなぜまったく偽装せず使っているのか意味がわかりません。
『デスノート』というタイトルで、中に名前と死因が書いてあったら、推理力3のバカ探偵でも「これはもしや!?」と思いますよ!
デスノートを使って世界を変えたいと願った時点で、デスノートをそのまま使うのではなく、存在そのものを別のものにすり替えてしまえばいいのです。
外国語学を専攻し、英語、イタリア語、少数言語…とたくさんの言語を学び、それぞれの学習ノートを大量に作っていく。
そしてその中にデスノートを紛れ込ませ、どのノートでも『毎日ニュース書き起こし』をやっていけば、絶対にこれが殺人ノートだと気づかれることはありません。ただの普通の学習風景です。
Lもお手上げでしょう。なぜならニュース書き起こし以外、一切なにもしないからです。逮捕のしようもありません。
問題は、物語としてまったくおもしろくもなんともないということです。
10週打ち切りは間違いなく、推理小説としても最低クラスの出来だと思います。
それでもミサの存在が非常に厳しい
ここまで推理小説的にデスノートの活かし方を考えてきましたが、デスノートを持つのが夜神月ひとりだけだった場合、それを完全に隠蔽することは十分可能です。
夜神月は天才的頭脳を持つという設定であり、上で挙げたような外国語学学習うんぬんも、実行したとしてまったく不思議に思われないでしょう。天才イケメンが世界に羽ばたこうとしていると思われるだけです。
しかし、第二のキラ、ミサが現れるとさすがに厳しい状態になってきます。
大学でニュース書き起こしをしているだけであれば、そもそもミサと接触することもないと思いますが、月が裁いた犯人の一人がミサの両親を殺害した人間だったため、ミサは『恩人』としてキラを慕っています。ここで接点が生まれてしまいます。
このミサ、キラと会いたいがためにテレビで呼びかけるくらい平気でしてしまう女性です。
(C) 大場つぐみ、小畑健、集英社
作中でも、死神だのさんざん重要キーワードをモロに放送していましたが、もしもこれを無視して応えなかったらどうなるのか?
もちろん、応えるまで放送がエスカレートしていくことは絶対に間違いありません。ミサは簡単には諦めない女性だと容易に推測できます。
つまり、第二のキラが出てきた時点でこちらも動かざるを得ず、そうなるとLから隠れることは非常に難しくなります。
作中でもさんざんしっぽを出してきたミサですが、こちらが大学や家でニュース書き起こしをしているだけだとしても、どんな予測不可能な行動に出てくるか見当もつきません。
そもそもミサが露出の多いアイドルという時点で最悪であり、しかもそのアイドルがマスクもサングラスもせず毎週デートを強要してくるという時点で、Twitterで隠すことすら難しいという状況です。全世界に月のことを知られてしまうでしょう。
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■この状況で週一回のデート希望。週刊文春であれば60回以上スキャンダルを拾えるはず。ミサとつきあいながら隠れることは不可能。
こうなると一般の推理小説では、主人公がミサを邪魔者として排除してしまうことが多いです。
実際にレイ・ペンバーや南空ナオミを排除してきた月ですが、ミサに関してはレムが見張っており、一生騎士であることを要求されています。
もはやとるべき方法は、さっさとミサをアイドル引退させて結婚、なんでもいいのでニュースにまつわる趣味や仕事ができるようにし、ミサごと隠居生活を送るしか道がないと言えるでしょう。
そういう意味で、2ちゃんねるまとめなんかの職業はベストマッチしているとも言えます。
なるべくミサと人目につかないように暮らし、「まとめで扱うニュースをメモしているだけ」という名目でデスノートにちまちまとニュースを書き留めていく。
これで一応、偽装することはできます。めちゃくちゃかっこ悪いですけどね。
月の最終的な職業は2ちゃんねるまとめの管理人だったんですね。そんな人でしたっけ?
Lは本当に見つけられないのか
さて、このように月が隠居生活に入り、ひたすら大衆のニュースをメモするだけの存在になった時、Lは本当に月を見つけることはできないのでしょうか?
もしも月が最初からニュース書き起こし戦法を使っていたなら、『リンド・L・テイラー』も死んでおらず、名前がわかれば人を殺せるのではないかというヒントも得られず、八方ふさがりのようにも思えます。
実際、Lは相当に厳しいと思います。月が静かに暮らしていた場合、手がかりがまったく手に入らないからです。
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■最初にLが取った、時間差で各地に映像を流し潜伏先を割り出す方法。
静かに暮らしている月には通用しなくなるが、そもそも今の時代、SNSですぐ拡散されるので、「お前は関東地区にいる!」といったところで、沖縄からTwitter見ていただけということもありうる。
しかし、八方ふさがりかといえばそうではなく、チャンスもあります。推理小説では、どんな状況からも道があるものです。
殺害方法がまったく分からなくとも、ニュースで報道された犯罪者は死んでおり、未報道の人間が死んでいないことから、Lにも『殺人に報道が必要』だということは容易に見当がつくはずです。
マスコミに掛け合い、『犯罪者の詳細報道は禁止』にすれば、まずは殺人を防ぐことが出来ます。
作中ではLの死後、実際にこのようなことが行われるも、ネット掲示板などで「裁いて!」と情報をリークする書き込みが増え、キラを止められなかったという描写がされています。
これは実際にそうなるかも知れませんね。
ですから、Lはこれらを自前ですべてやればいいのです。
まずはマスコミに掛け合い、犯罪者の詳細情報を止める。
しかし、それに反抗する市民の声を自ら部下を使って演じ、テレビなどでさんざん論争させます。やらせですね。
そして、キラに裁いてもらうためのネット掲示板の作成を、自ら行います。素人くさければくさいほどいいですね。月が見ても素人製作と疑わないような、つまらない掲示板をたくさん作成します。ただし、閲覧した人間の記録(IPアドレス)を取れるように細工しておきます。
同時に、2ちゃんねるの情報リーク板も作成し、閲覧した人間のIPアドレスもすべて提供するよう、Lの財力と権力で交渉すれば仕込みは完了です。
その後、犯罪者の情報がリークされ、殺人が行われたら、その掲示板を確認しに来た人間すべてを徹底的に総当りしていくことで、Lなら月を見た瞬間に『完璧すぎる』と違和感を抱いて捜査を始めることができるかも知れません。
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■月にさえ辿り着けば、Lならその完璧さに違和感を感じるはず…?
しかし、完璧すぎるも何も、その頃の月は東大を突然やめてアイドルと隠居、家で2ちゃんねるまとめを作っているという意味不明な存在。
こんなやつのどこが完璧なんだと逆に捜査されなくなる可能性もあります。
ちなみに、月が自衛のためIPアドレスを偽装する可能性もありますが、確かに日本警察はそれで犯人が探せなかった過去の事件もあるものの、Lは各国の大統領に直接交渉できるほどの権限があるようです。ただの探偵が、一体どうなっているのでしょうか?
これほどの権限があるなら、IPアドレス偽装のために他国のプロキシサーバを使ったとしても、それを追うことは十分に可能でしょう。犯罪者情報リーク掲示板を見た時点で、身元が特定されることは避けられません。
では、月は新しくデスノートを使うことができず、彼の計画は頓挫してしまうのか。
月にできるのは、情報リーク掲示板を自分で見る必要はないので、別人に見てもらい教えてもらうという方法。
作中で、月たちはよくデスノートで死ぬ前の人間の行動を操っていましたが、23日間までなら行動を操れるという特徴があり、逃走中の死刑囚に『リーク情報掲示板の犯罪者情報を、誰にもバレないように毎日印刷し、指紋を残さず封筒で私書箱に送れ』と命令するのです。
これでLのトラップにかからずとも、常時情報を受け取れることになります。これは月もマフィア相手に実際にやっていましたね。とはいえ、逃走中の死刑囚がいなくなったら、もう使えないのですが…。
この状況になると、互いにかなり長い膠着状態に陥ると思います。月もリーク情報が手に入らなくなった後、自分で無理して裁いてはいけません。しっぽを出してしまうからです。
Lは捜査方法がなくなってきますし、月も、操作できる人がいなくなったら、打つ手がどんどん少なくなっていきます。
推理小説では、とんでもない人物が現れたりして場面をしっちゃかめっちゃかにしていく頃合いです。お互いの力でどうにもできないからです。
ひとつのミスが状況を左右することになりますが、月にはミサという爆弾もあり、Lが攻めるとしたらここでしょうね。月は安全のため、ミサと南の島で隠居しておくしかないでしょう。
どこかで凡人として成熟しないと、月が勝つのは難しい
ここまで月が勝つための方法を考察してきましたが、最大の弱点は冒頭でも述べたとおり、「煽り耐性がなく、すぐ顔を真っ赤にして反撃する」というところです。
よく推理小説に月タイプの犯人が出てきますが、完璧に成功していても、どこかで大きなミスを見落としていたり、手足だと思っていた人間のミスで失墜したりしています。月も、有能すぎた魅上の行動で破滅しましたね。
月のような天才タイプの人間は、総じて足元がよく見えていないので、やはり失敗してしまって当然なのです。成功するためには、しっかり自分を鑑みることができていなければならないでしょう。
天才としてろくな失敗もなく、若くして成功するよりも、凡人として失敗だらけの中成熟したほうが、地盤はより堅実だということです。
月が成熟し、Lの挑発にも眉一つ動かさず、粛々と行動できるようになれば、どんな状況でも必ず勝機はあるでしょう。もともとLは、かなりキラを挑発して証拠を得ようとしていたところの多い人間ですから…。
しかし、成熟した月が活躍していたところで、そんな漫画なにがおもしろいのという根本的問題があります。
推理小説でも漫画でも、一癖も二癖もある人物が事件を起こすから、人々は「どうなるの!?」と気になってしまうのであり、『完全に成熟し、誰もかなわない人間が完全犯罪を成功させた』というのでは、その後あやしいツボでも売るのでなくては成立しないエピソードです。
月が成熟すればミスもなくなりますが、未成熟さと知性を兼ね備えているからこそ、魅力のある人物だと言えるのです。『罪と罰』のラスコーリニコフに似ていますよね。
デスノートは、結局夜神月が勝ち得ない、勝ってはならない未成熟さをもっているから、作品としておもしろいものに仕上がっているのだと思います。
■『罪と罰』はいろいろな翻訳や、漫画版が出ていますが、日本文芸社のものはかなり読みやすく、小説の再現度が高いのでおすすめです。DEATH NOTEが好きなら必ずハマると思います。
関連記事:ドッキリで死刑!?『罪と罰』の作者ドストエフスキーは作品よりおもしろい
第二のDEATH NOTE
DEATH NOTEは完結して長い作品ですが、いまだに幾度となく映像化され、ファンも「どうすれば月は勝てたのか」と議論される作品でもあります。
それは夜神月というキャラクターの魅力もありますし、また、月とLが戦う第一部に満足できたファンが、ニア・メロの第二部に満足しきれず、決着したのに消化不良であるという側面もあるでしょう。
実際、月とLが相打ちになった劇場版はファンの中でも愛されており、かくいう管理人も、コミックの映画化はがっかりさせられることが多いのですが、これだけは大満足の出来栄えでした。
やはり月はLと決着するか、第一部のままのスピード感で第二部も進めるべきだったのかも知れません。
DEATH NOTEが流行になった後、各雑誌で雨後の竹の子のように頭脳戦漫画が乱立しましたが、やはりそれでもDEATH NOTEは一番の金字塔だったと感じています。
ポテチ袋のテレビ監視含め、いろいろなあらが指摘されますが、ぼくにとっては十分に楽しませてくれた素晴らしい傑作のひとつです。
さて、頭脳漫画が一般的になった昨今、「またDEATH NOTEみたいな漫画が読めないかな」とうずうずしている方も多いと思います。
この世のあらゆる頭脳漫画を読み抜いている管理人が、DEATH NOTE好きなら楽しめる作品を最後に紹介して、今回は筆を置かせていただきたいと思います。
嘘喰い
さんざんうちのブログでも紹介していますが、これがデビュー作とは思えないほどの天才的傑作です。
最初のうちはあまりおもしろくないのですが、『迷宮編』あたりから天才的なストーリー展開になっていき、トリックやその暴き方も、本当の意味で納得できるものばかり。
もうぼくは毎週、ヤングジャンプが発売されるのを待ちきれず、「あのトリックはどうなっている!?」とページをめくる手を止められません。
作者は『ジョジョ』の大ファンらしいのですが、『ジョジョ』らしさも推理小説のような爽快さも持ち合わせた、まさに漫画の傑作だと思います。
難点は青年漫画であるためにグロい描写も多く、DEATH NOTEのようにスマートではないことですが、智謀あふれる格闘パート含めて、ぼくはすっかり虜になっています。
ONE OUTS
『LIAR GAME』の甲斐谷忍先生が描いた、野球ギャンブル漫画。
主人公の悪党、渡久地東亜(トクチ・トーア)は、ピッチャーとして1アウト取るごとに500万円もらえる代わりに、1点取られるごとに5000万を支払うという契約を球団とかわします。
当たり前ですが、どんな有能選手でもシーズンを通して黒字になることはなく、破滅すること間違いなしの邪悪な契約です。
これを切り抜けるための主人公の一策が、常に読者の予想を超えていて、非常に痛快な頭脳戦漫画。
銀と金
『カイジ』『アカギ』で一世を風靡した影に隠れる『銀と金』ですが、福本伸行先生の漫画の中でも屈指の名作だと思います。
多くの人間の権謀術数、まじりっ気のない頭脳戦を楽しませてもらえる傑作です。
最高の漫画だった『アカギ』は近代麻雀の看板になり、看板になることによって連載が終われなくなったのか、次から次に展開が先延ばしされ、最近は麻雀牌を配る(配牌)だけで1年かかるようになりました。
ファンの間でかわされる会話は、
「次の勝負始まりますよ!」
「今、配牌してますよ!」
「今月も配ってますよ」
「まだ配ってますよ~」
「やっと配り終えましたね!(一年後)」
「今からひとつめのパイをめくろうとする動作に入りますよ」
「めくろうとする動作が終わりかかってますよ」
「ひとつめのパイが明らかになりましたよ!」
と、悠久の年月を生きられなければ見守れない漫画になってきましたが、銀と金は短い巻数を一気に駆け抜け、福本伸行先生の真髄を垣間見れる漫画です。読んで決して損はありません。
期待のニューフェイス、アクマゲーム
大御所さんや、連載期間の長い漫画ばかりを紹介してしまったので、最近連載された期待の漫画を紹介します。
マガジンで連載されている『アクマゲーム』は、対象読者層こそ中高生を想定していると思うのですが、中高生だけの楽しみとしてはもったいないくらい、謎解きやトリックが優れています。
毎回繰り広げられるオリジナルゲームに納得の勝ち方、原作と作画に分かれている分、どちらも充実しています。
賭ケグルイもそんな感じなのですが、今後の頭脳戦漫画は次々とクオリティの高さを要求されていくため、原作・作画に分かれることが普通になるかも知れませんね。
■全話が一冊にまとまったDEATH NOTE完全収録版、もはや辞書クラスなんですけど、幻のニアが成長し『L』になってからの読み切りも初収録されていますのでおすすめです。