ぼくが子どもの頃夢中になって集めていた、ビックリマンシール。
アニメ化もされた大人気作品が、ついにスーパーファミコンの格闘ゲームとなって発売された時、幼いぼくはいやでも夢と期待がふくらみましたが、まさかこれが世界で一番のクソ格闘ゲームだったとは誰が想像したでしょうか?
ビックリどころではすまなくなったマンたちの悲鳴があふれる、世界初のゲーム中にもう勝たなくてもいいと思えてくる格闘ゲーム、スーパービックリマンについて紹介します。
主人公フェッニクスよ、格闘で敵を倒せ!たくさんの必殺技はないがふたつの必殺技で敵を倒せ!そしてひとつが当たったらゲームクリア
見出しの時点でなんのことなのかまったくわかりませんが、これがこのゲームのすべてなのです。
普通の格闘ゲームでは、飛び道具、対空技、近接技など、多くの必殺技を駆使して敵と戦っていきますが、なんとこのゲームでは必殺技がたったの2種類。
体当たり技と飛び道具という、なんのひねりもない2種類しか攻撃方法がありません。
しかもこの体当たりが異常に強く、体当たり中のどこにあたっても無条件で敵はふっとんでしまうという鬼仕様。
その上、このゲーム独自の起き上がりまでにちんたらしてしまうという謎システムにより、敵が起き上がる頃には確実にもう一度体当たりでふっとばすことができてしまいます。
この結果、体当たりが一度当たると、敵を倒すまで無限に当て続けることができるので、これひとつでゲームクリアできてしまうのです。
これが主人公のメイン技というなにを考えているんだかわからないゲームバランス。
まともに敵と向かい合うのは開始わずか2秒で、あとはすべて体当たりタイムになります。
プレイするのも苦痛になりますが、心を鬼にして体当たりしなければ、逆に自分がやられるはめになってしまうのです。
敵キャラはBボタンひとつで勝利を確定してくる!
敵の巨大ロボット、マスターPのBボタン通常技『膝蹴り』は、膝蹴りのはずなのに全身のどこにあたってもダメージをくらってしまうという謎の超強力技になっており、技発生から直後までのスキがゼロという鬼畜な仕組み。
Bボタン連打すると連続で膝蹴りを繰り出しますが、これを避けられるキャラクターはゲーム中にひとりも存在しません。
一度当たると死ぬまで無限に当たり続け、どんな方法でも決して逃げられないという悪魔のような通常技。
敵がこのような技を持っている以上、もはやこちらの体当たりが当たるか、相手の膝蹴りが当たるかの一騎打ちになります。
最強の体当たりと、最強の膝蹴り。
いま、どちらが最強の必殺技なのかが決まる…
ビックリマンはこんな話じゃなかったはず。
すべての技が無効になる最強の究極技、『ただのガード』を使え!!
登場キャラクターの8人中5人が無限ハメ技を持っているという、悪夢のようなゲームバランスのスーパービックリマン。
ではハメ技のないキャラはどうすればいいのかというと、敵の攻撃をくらえば負け確定、自分の必殺技も役に立たない物が2種類しかない以上、ガードすることが中心になります。
しかしこのゲームのガードは、たとえ後ろにまわられても瞬間的に対応する完璧なガードになっており、ガード中はすべての技が無効、投げ飛ばすことすらできないという究極の状態になっているのです。
普通の格闘ゲームではガード中に投げられると大ダメージを受けるために、的確な場面でガードする『駆け引き』が生まれますが、ガードが完全無敵であるのならば駆け引きなんてもう一切関係無し。
石のように固くガードして終わるだけの戦いになりますが、ずっと石のようになっているなら、もう対戦相手でなくても石でよかったという状態になります。
ガードしていても微妙に削りダメージを受けるために決着はつきますが、敵の技に当たると必ず死ぬことを考えれば、ガードして戦うことがハメ技のないキャラにとって最善の生存策になり果てているのです。
戦うことを諦め、ガードに徹した時のみ開かれる、ハメ死亡以外の『体力負け』という優雅な決着。
こんなゲームちっとも遊びたくない。
ストーリーモードはないが、セルフサービスで感動して終われ!
これだけクソゲーであっても、せめてストーリーがあってちゃんと結末を迎えられればクリアしたという気にもなりますが、なんとこのゲームにはストーリーモードが存在しません。
CPUと戦う1Pモードと、2P対戦のたったふたつのみ。
しかも1Pモードは操作キャラに選べるのが2人しかいないため、1人で遊ぶ場合、2人しかキャラが出てこない格闘ゲームへと成り下がるのです。
そしてその2人はどちらも無敵体当たり技もち。
体当たり以外の技がほとんど役に立たないことから、主人公を選んだ瞬間に体当たりゲームが始まります。
それでもキャラクターがしゃべったりすればいいのですが、ボイスは全員なにひとつとして存在せず、敵に勝利したとしても吹き出しの中に『♪』とか出るだけなのでなんの感情移入もできません。
ちなみに『♪』が主人公のゲーム中の全セリフです。
このゲームが発売できたという事実。
そんなことにスーパービックリマンです。