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信じられないツーショット!!
40年間、読者に愛され続けた『こち亀』がついに完結を迎えます。
いやだ!! 完結しないでくれ!! と、ニュースを聞いた朝はもだえましたが、続報を聞いてとび上がるほど驚きました。
『秋本先生、ワイドナショーで完結の思いを告白』…!!
秋本先生が、ダウンタウン松本のワイドナショーに出演!?!?
『こち亀』&ダウンタウンファンのぼくにとっては、本来なら絶対に交わらないはずのふたりが共演することに衝撃を受けました。
今回は、秋本先生がワイドナショーで語った『こち亀』の世界と思いについて、大ファンのぼくの解説含め、まとめてご紹介します!
緊張する秋本先生
ダウンタウンファンなら、松ちゃんが漫画ファンであり、こち亀もよく読んでいることを知っています。
松ちゃんは著書の中でもよくイラストを描いており、ラジオ『放送室』では、「漫画家になりたくて赤塚不二夫の『漫画家入門』を買った」と言うほど漫画を愛していることは有名です。
ですから秋本先生にとっては緊張する相手ではないと思うのですが、やはり普段の『怖い松ちゃん』のイメージが強い秋本先生は、本番前、東野幸治にヘルプを求めていました。
「ぼく口下手なんで、松ちゃんが厳しいこと言ってきたら、「いやそれは…」と、どんどん間に割って入ってきてください…」
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繊細な秋本先生らしいヘルプです。
ファンならみんな知っていますが、秋本先生は両さんのようなタイプではなく、とても温厚で優しく、ジャンプ連載作家からも慕われ続ける人格者です。
決して怒らない、きつい言い方すらしない人だとみんなに言われています。
松ちゃんも秋本先生のファンですが、やはり厳しいイメージが先行するので、秋本先生は緊張してヘルプを出されたんでしょうね。
このことは全然いいと思うんですけど…
問題は、
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松ちゃんの目の前でそれを言ってるということなんです。
なんで!? 先生だめだって!!
そんなことしたら絶対いじられるって!!
せめて楽屋で… 先生だいじょうぶなの!?
聞こえてるってこれ!!
そう心配していたら、やはり開始1分も経たないうちに松ちゃんにいじられ、
「さっきの東野へのヘルプ、丸聞こえだったんで、ほとんど悪口と言ってもいい状況でした」
とネタにされてしまいます。
「そんなふうにすぐネタにするから怖いんですよ~!」と笑っていた秋本先生。
心配させられましたが、松ちゃんも秋本先生を尊敬するひとりなので、その後は静かに尊敬の念をもってトークを進めていました。
この後トークは核心であるこち亀完結へと迫ります。
40年を振り返っての言葉
こち亀の秋本先生は、デビュー作『こち亀』1話から現在の200巻まで、40年間一度も連載を落としたことがないという天才です。
常に編集部には、万一のことを考えたストックを5週分も渡しており、秋本先生が病気で倒れても連載は滞りなく行われる仕組み。普通はこんなことできません。
ワンピースの尾田先生は、「なにか秘密があるはず」と秋本先生の職場を見学した時、懸命に仕事に打ち込む秋本先生の姿と、「早く原稿を書く秘訣は?」との質問に
「一生懸命描くんだよ」
と答える秋本先生に心打たれたと語っています。
秋本先生が社長を務める会社『アトリエびーだま』は、漫画家による節税企業などではなく、アシスタントを正社員として雇い、安定した給料とホワイト企業のような勤務時間のもと、徹夜などを一切なくし、休憩もたっぷり取れるという夢のような『漫画会社』です。
そしてこういう仕組みがあるからこそ、アシスタントたちはのびのびと実力が発揮でき、ベテランが勢ぞろい、退職率も低く、毎週安定したこち亀を支えています。
若いアシスタントさんたちとの会話の中で、ネタが見つかることも多いという秋本先生ですから、この『アトリエびーだま』の仕組みが秋本先生の連載を支えているのは間違いないでしょう。
ワイドナショーの話に戻りますが、やはり今回も、「こんなに長く続くと思っていましたか?」などの質問が飛び交いました。
「一作一作、書くことが精いっぱいで、気づいたら…という感じですね」とコメントする秋本先生。
少年ジャンプでギャグ漫画を40年というのは、もはや今後誰にも到達することのない記録なのではないかと思います。
ただただ尊敬の思いしかありませんが、読者にはギャグ漫画という表の世界しか見せていなくても、執筆する側にとっては、数多くの言葉にできない苦労を経験されてきたはずです。
ひとくちに40年といってもとても深い重みを感じてしまいます。
10月発売の『ジャンプ流』(秋本先生号)では、秋本先生の漫画の描き方について、もう少し深く迫れるのかなと期待しています。
■番組内で紹介された巻数ランキング。
松ちゃん「199巻ですよ!? 110番超えてるんですよ!」
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■完結の話題に触れると、スタジオ内は騒然としました。
松ちゃん「200巻でゴルゴ捕まえてほしいな~」
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今も描いてて楽しい『こち亀』
秋本先生「今も描いてて楽しいんですけど、どこかで終わりにしなきゃいけない。
200巻だとちょうどまとまるし、40周年のお祝いの時に、両さんはお祝い事が好きだから、その時にわーっとお祝いやって姿を消すというのが最高のエンディングかな…と…」
このあたりはこち亀公式サイトで語られたことでもありますが、ワイドナショーでも、編集部は完結をしぶったということを言われていました。
『ゴルゴ13』を45年以上書き続けている、さいとう・たかを先生も、こち亀完結に寄せて、「さみしくて、うらやましい」とコメントされています。
「ご苦労さまと言うしかない。連載があれだけ長くなると、作品が自分のものではなくなるので、やめるにやめられなくなるものなんです。(こち亀は)雑誌の顔になっていましたから、よく決断できたなあ。寂しいのと、うらやましいのと、不思議な気持ちです」
今もこち亀のネタはたくさんある、描いていて楽しい。
でも、こち亀は一度これで完結として、また遊びに来る。
連載中に同時並行して描いていた作品もあるので、そっちを続けていこうかなと考えています…というのが秋本先生のコメントです。
漫画家をやめるつもりはないです、とのこと。
秋本先生は63歳ですが、それでもやりたいことが溢れているというところに、ぼくたちファンが秋本作品に魅了される理由がこめられているような気がします。
ちなみにこち亀と同時に連載されていた作品では、『ミスタークリス』などが有名です。
これは、秋本先生版『ゴルゴ13』といえばいいのでしょうか。
スパイからスナイパーまでなんでもこなすA級工作員だった主人公が瀕死の重傷を負い、脳を女性の体に移植して助かったことから、『美しき女工作員(心は男)』として活躍する物語です。
『ミスタークリス』は『こち亀』にない味があってまたおもしろく、短いページ数にぎゅっと内容が詰まっていておすすめです。
秋本先生の思い出に残っている話
40年間で、秋本先生が記憶に残っている話はなにか?という質問もされていました。
これは『こち亀』のディープファンであるぼくでも難しい話で、一番と言われても選びきれず、せめてベスト30くらいにしてもらわなければ選別できる気がしません。
MC・東野幸治が選ぶ思い出深い話は、両さんが『人間UFOキャッチャー』するときのお話。
人間がUFOキャッチャーのクレーンとなり、下にある電化製品や高価な品物をキャッチして戻ってこれれば貰える、というテレビ企画のお話です。
多くの参加者が、クーラーを狙おうとして重くて落としてしまったり、高価な製品を見定めている間に時間切れになってしまう中、両さんは一直線にポルシェへと直行。
リアエンジンのポルシェは全部が軽いはず、とポルシェの前部をつかみながら、「ここからが本番だ!!」と、高価な家電製品コーナーへと移動。
高価なビデオカメラをネックレスのようにいくつも首に巻き付け、足の指にもカメラを5台ぶらさげ、ビデオデッキを足の間に3台はさみ、時計や電子手帳をポケットに入れ、ついにどこにも商品を持てる余裕がなくなったので、ポルシェを歯で噛んで持ち上げるという荒業に出ます。
これは1000回記念のファン人気投票でも上位に挙がったお話なのですが、ぼくもお気に入りなので未読の方は見てみてほしいですね。このあたりのこち亀はディープなあぶらが乗っていて楽しめます。
こち亀73巻に収録されています。
秋本先生が思い出に残っている話は、『怒鳴り屋』のお話。
秋本先生が言うに、「普通に描いたんですけど、けっこう可笑しいお話」とのこと。
このエピソードが挙がるとは意外でしたが、『こち亀』のなかでゼネコンなど社会問題が取り扱われ、両さんがよく知らないけど社会を代表して怒鳴りに行くというお話です。
ゼネコンなどの社会問題をわかりやすく紹介しながら、よく社会をわかっていない両さんが怒鳴るので、だんだん個人的怒りにシフトしていくのもおもしろい。
両さんの怒鳴り屋は、ふだん言いたいことが言えない市民たちから、「社会問題をかわりに怒鳴ってくれてすっきりする! もっとやって!」と言われるヒーローになっていき、そのうち金さえもらえば何でも怒鳴る奴になりさがっていきます。
最終的に外国で国王にいきなり怒鳴ったことから逮捕されるというオチでしたが、とてもウィットに富んだ回だと思います。
ゼネコンなどを子どもにもわかりやすく解説しており、普通は漫画で得られない知識を子どもたちが得られるという点で、もっとやってほしいと思える方向性です。
ぼくも幼いころ、『こち亀』で「こんなことあったんだ~」と思わされることがたくさんあってためになりました。
こち亀105巻収録、97年発行で、もう20年くらい前ですね。
こち亀は未来を予言している?
「あったらおもしろいな、をまず漫画で描いてみる」と言う秋本先生に、未来を予言するようなお話があると特集されていました。
- 1981年に自動掃除機が漫画に登場→20年後にルンバ発売
- 1988年にシミュレーションゴルフ登場→95年に誕生
- 1997年に女の子育成課金ゲーム登場→現在のスマホ課金ゲーム
松ちゃん「事実は小説よりも奇なりと言いますが、事実が寄ってくることはありますよね」
これはぼくも覚えてますけど、『女の子育成課金ゲーム』がこち亀で登場した際、「えげつないな~」と笑って読んでいた記憶があるものの、実際の世の中はもっとえげつなくなっていることに戦慄してしまいます。
■これくらいのことは、世の中で普通にある状態になってしまいました…こち亀105巻収録 (C)秋本治、アトリエびーだま、集英社
ファンの間では『こち亀』の秋本先生の先見性はすごいと言われていますが、秋本先生も未来を予言するつもりで描いたのではなく、純粋な「あったらおもしろい」という好奇心なんですよね。
でも、秋本先生の好奇心はいつも、みんなが「おっ!」と思うような面白いことで、それが秋本先生の漫画が愛される理由だと感じています。
そして完結の200巻へ
9月17日、少年ジャンプ42号で完結と同時に、200巻を発売してこち亀は本当に終わります。
最終巻はなんと400ページ、コミック2冊分のボリューム。
191巻から1.5倍のボリュームで収録されていましたが、こち亀は途中でコミックが出なかった時期があり、その時の話がコミック未収録でストックされていたんです。
本当は去年2015年で200巻だったんですけど、完結の節目に合わせるため、2年前からコミックのボリュームを増量して40周年で終われるようにしていたようです。
最後の200巻は特装版も存在し、1000円近いですがキャラブックもつくとのこと。
購入したらまたこちらでレビューしますが、自分がさみしすぎて開封して読めるのか心配です。
秋本先生、本当にお疲れ様でした!!
でもでも、ファンはこれからもずっと応援してますよ!!